お題《星に願って》
星花が夜空から流れてくる
流星の流れる季節を《流花》と呼び
元星の民であった地上の民は落花と歌われる
星にはなれない星
それでも夜の帳が下りれば祈歌を空へ捧ぐ
いつか故郷に還るのを待ちわびながら
季節は巡り
花は咲き
やがて花は枯れる
それは流花も同様
星の民ではいられなかった彼らが
不変でいられるはずもない
《途中書き》
お題《遠く……》
天も地も蒼白に埋もれていく
街も花も色を失って
静寂は聖域のように
(……)
記憶の中でも
僕は動かない
虚ろな瞳で天から降る花を仰いでいる
天にはきらびやかなお城があって
そこには見たこともない美しいお姫様や
魔法使い、吟遊詩人、エデンの騎士
物語に登場する英雄たちが存在している場所があるのだという
病弱な母が聞かせてくれた絵本には夢があふれていた
お金がなくとも
僕は……母とこの絵本があればいい
それだけで生きてゆけるから
それだけで……………………
音がしない
僕の世界から花が消えた
お題《誰も知らない秘密》
風花は誘う
彼の者しか聞き取れない囁きで
神隠しの国へ招く詩を
現し世の目では視ることのできない
真実は鳥居の奥のその向こう側
香りは儚く淡い花香
夢から覚めたら忘れてしまうような
遠い懐かしい
何処かへ置き忘れてしまったような
旅人が語ってくれた冒険譚のような
いつ境界線を越えてしまうのか
いつ惹かれ引かれていってしまうのか
わたしですらもう――憶えてない
すぐに忘れてしまう
あの花も
あの詩も
それは幻霧に霞んでゆく
お題《静かな夜明け》
室内を満たすのは鬱蒼とした空白の感情
恋人と些細なことで言い争って
手つかずの料理
恋人が好きだと作ってくれたスープも
今は沈黙の海でしかない
もっと話したかった
もっとあなたの日常の色を知りたかった
でもあなたにはここではない楽園があった
わたしじゃなかった
わたしだけが夢見て
散った
お題《永遠の花束》
紡いできた想い出を編んでみる
記憶に刻まれた物語を
それは四季織のように
どうしようもない絶望も
踊るような幸福も
ふりかえれば財産だ
宝石にならなくとも
価値にならなくとも
それは誰かの世界観で決めることじゃない
自分の意思で、瞳で、掴んだもので、決めることだ
それはいつかきっと永遠の花束となる
その美しさは色褪せない
あなただけの輝きだから
誰にも分からずとも
それは誰のせいでもなければ
あなたが悪いわけじゃない
わたしは、それを美しいと想う
あなたの生きた証なのだから