お題《静かな夜明け》
室内を満たすのは鬱蒼とした空白の感情
恋人と些細なことで言い争って
手つかずの料理
恋人が好きだと作ってくれたスープも
今は沈黙の海でしかない
もっと話したかった
もっとあなたの日常の色を知りたかった
でもあなたにはここではない楽園があった
わたしじゃなかった
わたしだけが夢見て
散った
お題《永遠の花束》
紡いできた想い出を編んでみる
記憶に刻まれた物語を
それは四季織のように
どうしようもない絶望も
踊るような幸福も
ふりかえれば財産だ
宝石にならなくとも
価値にならなくとも
それは誰かの世界観で決めることじゃない
自分の意思で、瞳で、掴んだもので、決めることだ
それはいつかきっと永遠の花束となる
その美しさは色褪せない
あなただけの輝きだから
誰にも分からずとも
それは誰のせいでもなければ
あなたが悪いわけじゃない
わたしは、それを美しいと想う
あなたの生きた証なのだから
お題《ただひとりの君へ》
春風に誘われて美術館へ足を運んだ
理由なんてない
興味もない
それでも一目惚れしたんだ
足を止めた
まるで足が運命を知るように
真っ白なアンティークのドレスを纏い
桜色の唇に花笑み
椅子に腰かける美しい人
僕はこの絵画を知らない
それでも足は先を見る
遠い過去の異国の人が描いた絵画
僕はその時代に想いを飛ばす
もしこの時代で出会えたなら
美しい言の葉で綴った手紙を渡すだろう
まだ見知らぬ君へ
名もなき絵画の君へ
お題《透明な涙》
信じられないくらい空は綺麗だった
カメラのファインダー越しからみた風景は
僕の瞳から見た空は薄汚れて錆びていたはずなのに
僕の想う空は空想に過ぎない
公園のベンチから見上げたあの日
僕は空を手に入れた気がした
馬鹿みたいだと思うかもしれない
でも本当なんだ
いつだって空は寄り添って
そこにいてくれた
僕が空白で泣けない夜だって
空は涙の花を降らせてくれた
人でも癒せない傷がある
「空に会いにいこう」
この絆は永遠だ
お題《幸せとは》