お題《香水》
見慣れた町の。
見慣れたカフェの、知らない物語。
翡翠の木々が眩しいカフェテラスの一角。月を淹れたような香水瓶片手に、流暢な語り口調で、その香水の物語を聞かされる。
青いビロードのような瞳を持った、美しい陶器のような彼は、カフェで異彩を放つ。
惹かれてしまった《引かれてしまった》
町の片隅で壊れていた時に、笑顔で、その香水の香りを知ってしまったら――もう、後戻りはできないのだから。
お題《言葉はいらない、ただ…》
その瞳で、あなたの見てきた風景を語ってくれませんか。
わたしの瞳には光がさしません。
でもきっと数多の夜も、あなたの風景を聴くためにあったのでしょう。
雨の多い日々さえも――光降る日々に、変わってゆくから。木漏れ陽降る日々へ――。
お題《突然の君の訪問。》
無気力だから、生活感は水底。
泡沫となって消えてしまえと心の鉛を呑みこむ。
だから君が颯のように、玄関の扉を開けて入ってきた時――とてもとても嬉しかったんだ。
「一緒に食べよう」
きらきらした果物ゼリーとミネラルウォーターが眩しい。私の好物の、ハムとチーズの君特製のスペシャルサンドイッチも――。
きっと明日から浮上できる、陽だまりの花咲く場所へ。
お題《鳥のように》
文机の引き出しに閉じ込めた夢のかけら。
不器用だけど、物語を灯すのは好きだった。
誰かの描いた物語じゃない、自分の描いた希望を灯した物語。
言葉の嵐がこわかった。
私は、臆病だから。
でもいつか鳥のように、自由に果てしなく飛んでゆくんだ。
今は希望を翼にこめよう、いつか旅立つその日のために。
お題《さよならを言う前に》
明日に希望を灯してくれる光だった。
何気ない日常のやり取りすらも薔薇園になる。
君に伝える《嘘》をどうか許してほしい。
真実を灯す勇気はなかった、僕が向かうのは終焉だから。
いつかまた再会できたのならその時は、どんな炎も受け入れよう。
笑顔の中の悲しみを、君は見抜いてしまったかもしれないけど。