月下の胡蝶

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6/3/2023, 3:02:41 PM

お題《失恋》



好きじゃなかった。


だから失恋じゃない、失ったわけじゃない。



それでも桜の花が散るように、零れてしまう。



あなたの声とよく合う、いちごみるくみたいな彼女の笑い声。

廊下は淡く色づいて。

 


教室の片隅で震える肩。





好きじゃ、なかった。




6/1/2023, 1:16:49 PM

お題《梅雨》


窓の外を彩る深い青の紫陽花。


しとしと降る雨音。


気怠い身体。


起き上がる気力もなく、ベッドに身を沈める。



傍らに緑茶の湯気揺らぐ。



あと――時間したらごはんを作って、洗濯機を回して。



恋人がプレゼントしてくれた、レモンキャンデーをご褒美に食べよう。




5/29/2023, 11:02:08 AM

お題「ごめんね」



隠し通せぬ嘘。


一度言の葉となった嘘は、解けて、失くなってはくれない。



「兄なんかいない方がいいよ」



友達と馬鹿笑いしながら通話で放った言葉。


この時知らなかったんだ。――扉の向こう側で、泣いていたあなたがいた事を。あの日、あの時。声なき声の涙に気づいてたなら、何か変わったんだろうか。



「ごめんね」と一言だけ書かれたメモ。


兄の部屋に向かった母の泣き叫ぶ悲鳴が、私に“罪人”という刃を突きつける。



壊れた母の壊れた叫び。


それを必死になだめる父。




――神様。私の一言はそんなに“悪”だったんでしょうか? 


夢ならサメテ………。


5/28/2023, 3:16:21 PM

お題《半袖》


晴れ渡る空。


向日葵畑の中手を引いてくれる彼。


そよ風で揺れる花の海。


おろしたての白いシャツの彼がまぶしくて、目を細める。



アイスクリームのキッチンカーの話をしたら向日葵に負けないくらい、輝く笑顔はじける夏の記憶。


ラムネ瓶の硝子玉のようだ。


5/27/2023, 12:28:44 PM

お題《天国と地獄》







都市伝説《金色の蝶》ローエンより。


「極上の幸福に浸かれば浸かるほど、堕ちていくのは簡単です。人は賢者でもあり愚者なのですから。終焉は、いつも隣にあるのですよ」



夜を纏う男は、月灯りの夜に語る。


紅茶の水面が揺れるグラスとレモンツリーのチーズの焼き菓子。


心に触れる泡沫の蝶は、今宵もやさしい毒を零す。


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