お題《神様へ》
たくさんの命が零れ落ち、煌めきを失いました。
神様は、何のために在られるのでしょうか。
世界は何のために、血を流すのでしょうか。
真実を知らぬのはあまりにも、愚かでしょう。
嘆いては消える言の葉たち――。
神様に届いていると、そう信じ願いを込めて。
お題《快晴》
青空には白がよく映える。
庭を真っ白に染めるほどの大量の洗濯物を干す傍ら縁側では、狐面の青年がのんきに茶菓子を食べている。それはこの前白雪が持ってきた、都市伝説にもなってる人魚焼きだ。人魚の生き血が練り込んである……とか何とか。
「ちょっとは働きなさいよね」
小言など言いたくないが、何も言わないと永遠にだらけるのだこの男は。
「んーヤダ。働くのってエネルギーいるし」
「またそんな屁理屈言って。この前もその前もあなたそこでお茶飲んで、茶菓子食べてばっかりだったじゃない」
「そこに茶菓子があるから?」
「そこに山があるからみたいに言わないで」
洗濯物を干し終え、思わず深い溜息が溢れる。
こうなったのも全部母のせいだ。
――この狐面の面倒を見なきゃいけなくなるなんて。
そしてその母は。
「久しぶりにちょっとそこまで出かけてくるわ。後はよろしくね。くれぐれも、頼むわよ」
いい笑顔で、行き先も告げず――連絡先も教えず、そのままだ。
お題《遠くの空へ》
想い描く夢ひとつ。
いつか描いた夢は、いつかいつかと遠ざかって泡沫となって、散ってゆく。
それでも夢の翼を描いて、蒼穹目指す鳥になるんだ。
お題《言葉にできない》
忘れられたわたし。
今日も教室には雨が降る。
破り捨てられた教科書も。
目の合わない日常も。
いつか終わる。
いつか変わる。
淡い期待の海に溺れて沈んでは、浮上を繰り返す。
そんな日々に疲れてしまったわたしが出会ったのは。
風に揺れる向日葵のように、陽に煌めく髪の少年。
色褪せた本を宝物のように抱いて笑った。
「君が望むなら。――ひとひらの夢を魅せてあげる」
瞳から優しい花びらが、零れ落ちた。
お題《春爛漫》
青空の開演。
青い小花の子どもたちは懸命に道端で背伸びをする。
囁くように、楽しいおしゃべり。
公園で淡い黄色のワンピースを広げる子どもや、ふわふわのワンピースが風に咲く子ども。
今日も日常には夢があふれている。