お題《鏡の中の自分》
これは私。
これはわたし。
これは、ワタシ…………?
認識できなくなってゆく。
真実(ほんもの)の自分がどんどんわからなくなってゆく。
《自分》って、なんだった?
お題《眠りにつく前に》
現の涙は忘れて
青い夢物語を
現で笑顔を忘れてしまったのなら
夢幻の中で想い出せばいい
今前を向けずとも
それは必要なこと
だからおそれなくていい
青い夢物語へ沈んでおいで
《青》古代から幸せの象徴とされる色
お題《理想郷》
どんなに遠くとも
いつかきっと、たどり着くだろう
あなたは自分の意思で旅立つことができるのだから
あると信じ飛び立てるあなたなら
お題《もう一つの物語》
どうか、あなただけは生きて。
もうひとりのわたし――貴女だけは、生きて証明してみせてよ。私が幸せになれる未来を。
“あなたは幸せになれないの”
“禍月のこどもなんて気持ち悪い”
“原罪――”
流れる血も
流れる涙も
永遠に止むことはないだろう――ずうっと続いてきた夜の痛みが、けっして消えることはないのだから。
私は……わたしに賭ける。
すべてを。
お題《紅茶の香り》
観葉植物に囲まれたガラスドームの温室。時を多く刻んだ、少し古めかしい蜂蜜色の机に並ぶ茶器――紅茶がなみなみと注がれたティーカップの水面は、淡い翡翠色。
爽やかな香りがする。
「……なんのお茶なんですか?」
「王都エルシオンから取り寄せた茶葉と、月時雨にしか咲かない花で淹れた。効能は疲労回復、魔力回復、笑顔の花」
そう教えてくれたのは、この温室で、たくさんの植物を育ててる月読くんだ。世間を騒がせているイケメン翠緑士である。“翠緑士”とは、植物の加護を受けた者――あらゆる知識と薬茶をつくりだせる存在。
今のところ月読くんしか知らないから、希少な存在なんだろう。
温室で気を失ってたわたしを拾い、あっという間に薬茶をつくったのだから驚きだ。
「……」
「い、いただきます」
無言のまま促され一口。また一口と、結局最後まで飲んでしまった。あまりの美味しさに、少女から美しい花が夜明けにほころぶ。
「とても華やかで、あまくて、ふわふわします……!」
「顔見ればわかる」
「……!!」
月読くんの笑顔は極上だ――。