お題《これまでずっと、自分の素を出せなかった》
今日も表情を消すんだ。
日常を游ぐことに疲れてしまったんだ。
毎日誰かが誰かの毒を吐く。
毎日誰かが誰かを傷つける。
毎日愛想笑い、嘘でとりつくろって。
今日も表情を消すんだ。
日常を游ぐことに疲れてしまったんだ。
それでも誰かが、やさしい。
だからそれでいいんだ。
お題《1件のLINE》
どんな憂鬱な日々もその笑顔が道標だったよ。
迷った時。
立ち止まった時。
おまえだけが光だった。
いつか夜を越えることができたら、逢いにいくよ。
だから今だけは泣かせて。今だけは……。
この雨がやむまでは――。
部屋の片隅で、ただ泣いた。声の限り。
スマートフォンの画面には笑顔のふたり。
雨音がかき消す、世界が音をたてて崩れてゆく。
お題《朝、目が覚めると泣いていた》
夢だとわかっていた。
夢だと、思いたかった。
朝焼けのようにまぶしい笑顔。
あの日解けてしまった、繋いだ手。
「おそろいだね」
君がくれたダイヤモンドの指輪。
君がくれたテディベアのぬいぐるみ。
君がくれた未来は、もう叶わない。
ありがとうも。
さようならも。
――なにも、つたえられずに。
つたえられないやりきれなさは、今も哀しみの雨となって私の心に染み込むの。
人魚姫にもなれない嘘月の私。
お題《私の当たり前》
言の葉を織って流すこと
記憶の中に眠る日常や忘れられない時間を描く
わたしの想いや物語を誰かに届けたいから
それで、誰かの日常がすこしでも色鮮やかになればいいと想う
誰かの不安や切なさに寄り添うような物語を
想いの言の葉を伝えたくて
わたしは今日も言の葉を織って流す
《何もしなければ 何も変わらない》
《想いを伝える時に伝えなければ 大切な人も時間も待ってはくれないから》
《大丈夫 あなたと一緒にこれからも歩いてゆくから》
読んでくれてありがとう
いつでもあなたのそばに月がありますように
お題《街の明かり》
青い記憶の街。
水底に沈んだ街を照らすのは、青い満月。
歌語りが聴こえる。
吟遊詩人がハープを奏でながら、月を見上げている。
――何を想っているのだろうか。
美しい旋律は空へと消えてゆく。
この街には青い薔薇がたくさんが咲いていたけど、それも遠い昔のこと。
――あんなに美しい薔薇だったのに。
吟遊詩人の瞳に映る月が照らすのは。
今はもう亡き幻影の街。