月下の胡蝶

Open App
7/12/2022, 10:37:39 AM

お題《これまでずっと、自分の素を出せなかった》


今日も表情を消すんだ。


日常を游ぐことに疲れてしまったんだ。



毎日誰かが誰かの毒を吐く。


毎日誰かが誰かを傷つける。


毎日愛想笑い、嘘でとりつくろって。



今日も表情を消すんだ。


日常を游ぐことに疲れてしまったんだ。



それでも誰かが、やさしい。


だからそれでいいんだ。


7/11/2022, 12:06:11 PM

お題《1件のLINE》



どんな憂鬱な日々もその笑顔が道標だったよ。


迷った時。


立ち止まった時。



おまえだけが光だった。


いつか夜を越えることができたら、逢いにいくよ。



だから今だけは泣かせて。今だけは……。


この雨がやむまでは――。





部屋の片隅で、ただ泣いた。声の限り。


スマートフォンの画面には笑顔のふたり。



雨音がかき消す、世界が音をたてて崩れてゆく。


7/10/2022, 11:27:15 AM

お題《朝、目が覚めると泣いていた》


夢だとわかっていた。


夢だと、思いたかった。



朝焼けのようにまぶしい笑顔。


あの日解けてしまった、繋いだ手。


「おそろいだね」


君がくれたダイヤモンドの指輪。


君がくれたテディベアのぬいぐるみ。


君がくれた未来は、もう叶わない。




ありがとうも。


さようならも。



――なにも、つたえられずに。




つたえられないやりきれなさは、今も哀しみの雨となって私の心に染み込むの。


人魚姫にもなれない嘘月の私。



7/9/2022, 11:40:41 AM

お題《私の当たり前》


言の葉を織って流すこと

記憶の中に眠る日常や忘れられない時間を描く

わたしの想いや物語を誰かに届けたいから

それで、誰かの日常がすこしでも色鮮やかになればいいと想う



誰かの不安や切なさに寄り添うような物語を


想いの言の葉を伝えたくて

わたしは今日も言の葉を織って流す


《何もしなければ 何も変わらない》


《想いを伝える時に伝えなければ 大切な人も時間も待ってはくれないから》


《大丈夫 あなたと一緒にこれからも歩いてゆくから》




読んでくれてありがとう


いつでもあなたのそばに月がありますように


7/8/2022, 11:14:56 AM

お題《街の明かり》


青い記憶の街。


水底に沈んだ街を照らすのは、青い満月。





歌語りが聴こえる。


吟遊詩人がハープを奏でながら、月を見上げている。

――何を想っているのだろうか。

美しい旋律は空へと消えてゆく。


この街には青い薔薇がたくさんが咲いていたけど、それも遠い昔のこと。


――あんなに美しい薔薇だったのに。



吟遊詩人の瞳に映る月が照らすのは。


今はもう亡き幻影の街。




Next