#花の香りと共に
春の花といったら
俺には桜ぐらいしか思い浮かばなかった
けれど今はもう一つ知っている
黄色い丸くて小さな花が集まっている
ミモザだ
甘すぎず爽やか香りは
何度でも俺にあの日を思い出させる
転職のために会社を辞める日
初めて教育係を担当した後輩のアイツに
もらった花束
そして……
きっと今日は大きなミモザの花束を
抱えて帰ってくるだろう
花の香りと共に
俺たちの記念日を祝うために
#心のざわめき
入社三年目で突然始まった遠距離恋愛
キミが背中を押してくれたおかげで
踏み出すことができたけれど……
通話で声を聞くことはできる
カメラを起動すれば顔も見れる
『バイバイ』
『また明日』
終了ボタンを押すたびに
心のざわめきを感じてしまう
明日もボクのことを
好きでいてくれるかな……と
触れたい
頬へ指先を触れさせると
恥ずかしそうに笑みを溢すキミに……
#君を探して
電車の入り口近くで
立っていたキミ
スマホを見つめるために
みんなは俯いている
けれど君だけは
真っ直ぐ顔を上げて外を見ていた
綺麗だと思った
あの瞳に見つめられたらと思うと
胸が沸き立つ
だから今日もちょっと早起きして
朝練もなくなったのに
ラッシュ前の電車に乗る
君を探して
#透明
よく純粋だという表現に
真っ白なキャンバスなんて言うけど
僕が思うに
君は真っ白なキャンバス
という表現よりも
透明という言葉がしっくりくる気がする
だって白いキャンバスは
絵や色に染められてしまうけど
君はなにがあっても染まらない
それってすごいことだと
もう少し自覚をしてもらいたいね
けれど、それ故に
儚くて壊れやすいことも……
#星
あの星のように
誰が見ても輝いていて見えて
みんなに見てもらえる存在になりたい
そう思ってアイドルを目指した
それなのに……
今は隣にいるコイツばかりに
目がいってしまう
俺もファンも、みんな……
だから……
夢も希望もプライドも全部捨てて
俺はコイツのマネージャーになった
コイツをあのとき見た星のように
輝かせるため
俺はなんだってやる
なんだって……