つきよの

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5/2/2024, 12:37:28 PM

#カラフル

ある日君は、僕が見たことのないものを嬉しそうに持ってきた。

それはカラフルで、固いリボンのようなものだった。

銀テープと呼ばれるものらしく、何やら日付やらメッセージが書かれていた。

ファンの子たちは取り合いになるほど欲しいものらしい。

いつか自分の名前が入ったものをくれてやると言って、握りしめたまま眠りについてしまった君。

こんなものになんの価値があるのかわからなかったが、僕も君の名前が入ったものだったら欲しいと思ってしまった。

君の名前がキラキラしていたら、きっと飽きずに見つめてしまうだろう。

4/29/2024, 11:45:05 AM

#風に乗って

病室の窓から中庭を見下ろすと
君がベンチに座って俯いているのが見えた。

大方、僕にどんな顔をして会いに行くか迷っているところだろう。

きっとお節介な大人が僕のことを喋ったから。

僕は君が笑ったり怒ったり、屈託のない表情をみせるのが楽しみなのに。

ベット脇に置かれたチェストからノートを取り出してページを切り取ると、紙ヒコーキを折った。

窓を開け、春の香りを感じながら、僕は君に紙ヒコーキを飛ばした。

風に乗って、どうか僕の詩を君に届けてくれ。

そうすれば君はすぐに僕の元に走ってやってくるはずだ。

4/28/2024, 1:20:26 PM

#刹那

目が合った刹那、運命だと悟った。

二人で駆け寄り、手を繋ぐよりも先に唇を重ねた。

僕はやっと出会えた喜びで涙を流した。

君が流した涙は不思議と甘く感じた。

何度も何度も啄むように掬い取った君の涙。

その意味を知るのは、もう少し先だった。


4/27/2024, 12:01:31 PM

一行でもいいから今日の出来事を書いてみてと
病院の看護師さんから日記帳をもらった。

今日は雨だった。

今日は診察がお休みだった。

今日は……だった。

毎日同じことの繰り返しの日記は書いてもつまらなかった。

そこで、嘘の日記を書くことにした。

今日は昼休みにグラウンドでみんなとサッカーをした。

友達と一緒に帰って、明日遊ぶ約束をした。

遊園地に連れていってもらった。

『やってみたい』を毎日いっぱい書いた。

でも、そのうち生きる意味がわからなくなった。

みんなが普通にしていることを、僕は叶えられないと悟ったからだ。

誰かにこの気持ちをわかって欲しい。

僕は日記の代わりに詩を書き始めた。

生きたい。

会いたい。

好きになりたい。

色々な『したい』を詩にするうちに、僕は作詞家になった。

嘘つきの作詞家の出来上がりだ。



4/26/2024, 12:03:57 PM

#善悪

僕の行いを善悪で分かつなら
間違いなく悪だろう

君の視線の先に誰がいるのか本当は知っていた。
知っていて、知らないふりをして奪った。

後悔していないと言えば嘘になる。

けど、残された時間を君と過ごすことが出来るなら、今だけ君を独占出来るなら…



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