秘密を秘密たらしめるのは、自分以外の誰からも見えない所に隠しおく事。
それは、抱えれば抱える程に心を重く蝕んでいく。言わなければ解放されないのに、喉に空気の塊が詰まって言葉になってくれない。しかも、それを繰り返す度に微かな隙間さえも塞がっていく。
嘘も隠し事も大嫌いだ。結局苦しむのは私だから。
『誰も知らない秘密』
「ずっと長く楽しく美しく、終わりも忘れてしまう程の旅を創って行こう」
貴方に手を引かれて飛び立ったあの日から、私達の歩む道は満天の星空の様に煌めいている。
陽の光を一身に浴びて生い茂る草原も、朝露を湛える一面の花畑も。月明かりに照らされる貴方の姿だって、一つ一つ綺麗に大切に心の展覧会に飾ってあるのだ。
誰もが忘れたって私だけは忘れない様に。そんな誰かにまた色彩を、感動を、愛情を伝えられる様に。
そして、もっと知らない景色を味わう為に、手に入れる為に。いつまでもこの旅が続きますように。ずっと旅の途中でありますように。
『旅の途中』
ずっと一緒に居たい人が居る。
貴方の過去を聞き出せないのは、踏み込めないのは。
貴方が躱してしまうから、聞かれる事を嫌がるからという事よりも、私がまだ貴方と離れたくないからの方が大きいんだろう。
ひらひらと舞う花びらのように掴み所のない貴方が、ほんの些細なきっかけで消え去ってしまうのが何よりも恐ろしい。
知らない貴方の姿を抱える私はきっと
貴方にとって『まだ知らない君』
太陽に向かって手を伸ばすと影が落ちる。
陽は落ちると同時に影を伸ばしていく。
そして沈み切れば全てが日陰に覆われる。
けれどまた朝日は昇ってコントラストを描いていく。
それは誰かが何もしなくたって、何かをしたって、変わる事は無い自然の摂理。
だから、もっと自由に生きて良いんだよ。
誰も君を咎める事なんて出来ないんだ。
『日陰』
「何をあげようかな」
明日は貴方の誕生日。何をあげたとしても貴方の喜ぶ顔が浮かんでしまって尚更わからなくなる。贅沢で切実な悩みだ。
目を走らせると白く眩しい程ライトアップされた商品の数々が陳列されている。照らされて初めて輝くなんて、私のようでなんだか落ち着かない。
地に足が着かない様な心地と共に、考えは浮かんでは消えてを繰り返す。
私は暗闇の中でも輝けるような、誰よりも私を照らしている彼にも光を与えてくれるような物を贈りたいのに。
ふと顔を上げると、視界の隅で何かが光ったような気がした。見失わないように駆け寄ると繊細で小さく、それでいてしっかりとしたネクタイピンがキラキラと瞬いていた。確かネクタイピンを贈る意味は、
「貴方を支えます」
『あなたへの贈り物』