テレビの音量を一桁まで下げて
できるだけリビングにいるようにしてる
か細い君の 僕を呼ぶ声が
ちゃんと聞こえるように
敷物の擦れる音が聞こえたら
体勢を変えるお手伝いがすぐできるように
君の呼吸 変化ひとつも とりこぼさないように
僕を見つめるその瞳の奥
心の声までも聞こえてきそうだよ
◇耳を澄ますと◇
あの娘が夜中にこっそりご飯を食べてたこと
目を離すと
びっくりするような場所にいること
呼んだと思ったら
撫でると そっぽ向くこと
あんたの傍に行きたそうだった娘を
連れてったのに すぐどっか行かれて
悲しそうにしてた顔とか
可愛くて可愛くて見つめてたら
顔を隠しちゃうところ
イケメンが出てる番組とか
猫が出てるアニメとか
しれっと観てるところ
いっちょまえに 怒るし ため息つくところ
日に日に 動作がゆっくりになっても
くりくりのおめめが健在なことも
いがぐり後頭部が 昔と変わらず可愛いことも
パパがいまお仕事でいないから
あんたと私しか知らないんだからね
パパには言わないであげるから
たまには妹の毛繕いしてあげてね
いままで沢山してもらってたでしょ
照れてるのか 意地張ってんのか知らないけど
いなくなってからじゃ
なにもしてあげられないんだからね
もうすこし ふたりで 見守ってようね
◇ふたりだけのひみつ◇
色とりどりの花が咲く
春の芽吹きの中で
きみは ゆっくりとお別れの準備をしているね
思い出を辿れば 愛らしいエピソードばかり
きみと出逢って
わたしの世界は 鮮やかに彩られた
きみがいなくなったら 目に映るすべて
モノクロと化すだろうけど
きみがいた日々は ずっと ずっと
色褪せない
◇カラフル◇
拝啓 貴方様
10年前の11月、
あなたといっしょにお迎えした可愛い娘が
もうすぐ虹の橋を渡ってしまいそうです。
愛娘は最初 わたしよりもあなたに懐きましたね。
可愛いハントの姿を 愛娘に見つからないように陰からよく覗いたものです。
1歳を迎える前に 愛娘はFIPを患ってしまって
ふたりで悲しみに暮れましたね。
でも愛娘は 投薬が体に合っていたのか
FIPと共に9年このお家で元気に過ごしてくれました。
それが昨年12月 悪性リンパ腫が見つかって
治療で2回寛解したんだけれど
耐性ができてしまってからは もう治療も強制給餌もしていません。
あなたとは 一緒に暮らした時間がそんなに長くなかったけれど
やっぱりこの子は あなたとわたしの愛娘だから
知る権利は あるのかなって。
でももう 伝える手段がないの。
こちらにも 新しいパパがいるし。
でもあなた、たまに想ってるでしょう?
子供たちは元気かなって。
わたしとは 連絡するだけの用事も関係性もないけれど
子供たちのことは 知りたかったよね。
いま あなたに届くように 願っています。
届きますように。
◇風にのって◇
ねー寒いから炬燵のスイッチつけてー
今日は鍋にしよっか!
‥やっぱまだ寒いからストーブもつけていい?
あんた、炬燵入るの?
はいどーぞどーぞお猫様
おふとん寒いよー
早く入ってきてよー
む‥今日は乗ってくるのねお猫様
どーぞどーぞ
冬は寒いからみんなで同じとこにいよーね
◇ふゆはいっしょに◇