忘れられない、いつまでも。
人間は忘れる生き物だから
忘れちゃうのはしょうがない
忘れちゃ困ることは
メモを取ったり
何度も繰り返し確かめたり
いろいろがんばるけど
大事なことに限って
どうして?ってくらい簡単に
忘れてしまうことがある
忘れたくない思い出だって
大切に大切に
繰り返し思い返しているはずなのに
ほんのりぼやけてしまったり
微妙な思い違いをしていたり
つまり
忘れちゃうし勘違いしちゃう生き物なのだ
なのに、忘れたいことに限って
臨場感たっっぷりに、よみがえる
事細かにその時の感情の揺れもそのままに
悲しみも悔しさも恥ずかしさも
いろいろ、いろいろ込めて
あああ〜
ってなるから余計に
忘れちゃう生き物のはずなのに
忘れられない
そう、いつまても
一年後
明日の予定を話そう
週末の行き先を考えよう
誕生日は何が欲しい?
きっと今年も夏は酷暑だね
電気代が心配だよ
過ごしやすくなったら
新米の季節だね、今から楽しみ
今年の冬、大雪だったらどうしよう
年越しはどこでする?
転勤はあるかな
今年はお花見できなかったから
来年はどこか行きたいね
GWはとうふソフトに味噌ソフト・・・
ソフトクリーム三昧だったけど
今度は違う味も食べたいね
去年もこんな話をしたっけね
一年後もまた一緒に
いろいろしよう
明日世界が終わるなら
明日世界が終わるなら
何をしよう
とりあえず仕事はお休み
できれば家族といたいから
確実に明日で終わりなら
買い出しも何もしないで
のんびりと休日のように過ごしたい
万が一生存の可能性があるなら
防災用品の確認とかしたい
うっかり生き延びたら
たいへんだからね
でもきっと
のんびりはできないんだろうな
きっと泣いてしまうから
いつかだと思っていた終わりが
明日来るのが悲しくて
その瞬間が来るのが恐ろしくて
それでも泣くならここで
家族と一緒に
それが望み
カラフル
恋をしたとき
視界のすべてが
鮮やかに色づいたと感じた
わたしの世界は
こんなにカラフルだったのか!
別の恋に気づいたとき
周りの輪郭が
すごくはっきりとした
色彩のみならず
解像度まで上げてきた!
はて、上がりっぱなしに見える
この世界、はたして今はどうだろう
普通の景色
なじみの世界
決してキラキラでもキリリッでもないけど
若葉はツヤツヤ元気だし
花は次々咲きほこる
太陽もなかなかの照らし具合
あの時の目の覚めるような彩りは無いけれど
今あるのは
とてもしあわせであたたかなカラフル
桜散る
家の庭には桜の切り株がある
今は切り株しかないけれど
一時花も見せてくれた
思い出の木
桜の花が散ると
葉桜になって
そのうち赤い実がなる
潰すと赤い汁のつくあれを
ポケットいっぱいに
幼い日の息子が集めてきた
中に桜の種が入ってるんだよ
さくらはえる?
どうかな?やってみようか
冷やしたり湿らせたり
室内に植えたり
数年かかって発芽して
さらに数年かかって
庭デビューした小さな木
ただの枝から見守って
わたしの背を越えた頃に
蕾が、初めてついた
街で見るような
満開の桜にはならなかったけど
ぽつぽつ咲く花を
まぶしく、いとおしくながめていた
ぐんぐん大きくなって
でも花はあまり増えなくて
だんだん葉が落ちて
花も葉も付かなくなって
枯れてしまったけど
桜散る季節には思い出す
ここにあった
輝く姿を