日が沈み闇が街全体を覆う。
二人手を取り合い、街灯を頼りに足を進める。
別に行く当てなんかない。
ただ、君と別れるのは嫌だからひたすら歩く。
この時間、この場所で、この手の感触を
一生忘れたくない。
君はどう思っているのだろう。
歩くのさえ億劫に感じてきた頃だろう。
でも、嫌な顔一つせず君は笑顔しか見せない。
その笑顔が俺をだめにする。
別れたくないのは、その笑顔を見て生まれた感情。
……失敗。
わざと遠回りして
終電に間に合わないよう送ろうとしたのに。
二人繋いでいた手を離し、
駅のホームを背景にして君は段々と遠ざかっていく。
この手、洗わないようにしよう。
優越感、劣等感。
大抵の人間は所持しているもの。
しかし、なんの取り柄もない人間が中には存在する。
僕はそういう奴が羨ましい。
「なんの取り柄もない。」
一件、残念に聞こえることだろう。
だが、自分の取り柄により、
勝手に人生の通路は開かれていく。
自分の得意なものだから、任される。
自分の苦手なものだから、任されない。
そうなると、普通の人より得意なものにだけ磨きをかけ、
苦手なものはもっとに苦手になる。
そして、段々人生は決まりきっていく。
そこでだ、なんの取り柄もないやつはどうだろう。
人にはある程度信頼され、
バランスよく成長していく。
自分で人生を決めれて、自分の道を歩んでいく。
普通。
その普通が羨ましい。
優越感、劣等感
こんなの僕の感情から捨ててやりたい。
ペット、今ではほとんどの人が飼っている。
だが、結局本気でかまってやるのは最初だけ。
時が経つにつれて、ペットは段々自分に寄らなくなる。
そこで初めてわかる。
これまでずっとしてきた行動は
なんの意味もない、ただ少し気が向いたら
少しの撫でる程度のもの、
ペットには何の愛情も伝わっていない。
犬、猫、鳥、いずれにしろ人間より寿命は短い。
その短い一生に
どれだけの愛を注ぐことができるかが大切なのだ。
これまでずっと考えていなかった。
でも、離れ離れになってからじゃもう遅いのだ。
明かりがない闇に包まれた部屋の中で
スマホだけが唯一の光を生み出した。
よく見ると、一件のLINEがきている。
どうせ、あいつが課題提出期限を聞いてきているのだろう
と、推測した。
仕方なくLINEを開いた。
その瞬間、部屋唯一の光は消え去り、闇の世界となった。
俺は気付いた。
スマホを充電していなかったことに。
目が覚めるとともに
聞こえてくる蝉の声で
夏だと察せられる。
嫌な季節だ。
この季節の間、眠りから目が覚める瞬間が大嫌いだ。
だけど、それとはもうおさらば。
僕は去年の夏頃に医者から言われた。
余命約1年、来年の夏頃にお亡くなりになられる。と、
だから夏は嫌い。怖い。
だから目が覚めるときが怖い。
夏が過ぎたら、きっともう僕はいないんだろう