【ミッドナイト・ゼリー】
形にならずに散らばった言葉を型に入れ、ゼリー液を流して冷蔵庫へ。
夜がいっそう深くなったころ、再び冷蔵庫のドアを開けると、眩く白い光を浴びせられてしまった。
これで今夜も私に「夜」は来ないだろうと確信しながら冷蔵庫から出した型から慎重に中身を外し、皿の上に無事に着地させると、ぷるんっ♪と波打つ深夜のゼリー。
この間、月面に着陸した探査機にもこんな緊張があったのだろうと的外れな思考を流しながら、
うやうやしく皿を持ち上げゼリー越しの夜を愛たら、私は皿の上のこの美しい世界を崩す神になった。
お題「ミッドナイト」
【追伸・海の底のひとりぼっちより】
誰かの捨てたアンテナがゆっくりと落ちて来て
掴んだ私は海底ラジオ
流れる唄は懐かしの昭和歌謡から心に沁みる系
グロテスクな気味の悪い姿をした
深い海の生き物たちが集まり始め
もの静かに耳を傾ける
全てが思慮深く、穏やかな海の底
そうして私は、
いつの間にかひとりぼっちではなくなっていたよ。
(前回の続編です)
【海の底のひとりぼっちより】
ひとりぼっちの海の底
誰かとつながりたくて
Bluetoothをオンにしたけど
私を受信する何モノもここにはなくて
やっぱりひとりぼっちの海の底
#海の底
【月へ昇るエレベーターのペンギン】
君に会いたくて、
月≪ムーン≫エレベーターのチケット売り場前。
ICOCAは使えないけど、Suicaならオッケーって言われたよ。君がトーキョーにいた頃、一応、作っておいてよかった...。
ホッとしながら出発ロビーの椅子に腰掛けて空を見上げる。
今夜は月に木星が寄り添っているよ
君の見る宇宙≪そら≫はどんな様子なんだろう?
初めての月と久しぶりの君を想い、大人気なく高ぶる気持ち。
ティロロン♪ ティロロン♪
セットしておいたアラームが控えめなメロディを奏でる。
そろそろ出発の時間だ。
それにしても、Suicaは本当に一人勝ちだね
だってほら!
エレベーターボーイの制服を着たあのペンギンが、こっちを見て手招きしている!
#君に会いたくて
【踊る彼女】
カラカラと乾いた風に舞う木の葉
赤い靴を履いたパジャマ姿の彼女も優雅に無心に舞っている。
TikTokに載せたらBuZZるかも?
悲嘆に暮れすぎてとうとう打算が生まれ始めたよ(苦笑
彼女の呪いを解くのを諦めた訳じゃないけど、
見守るのもアリなんじゃないかなって思うんだ。
お題「木枯らし」