#83 初夏に始める恋物語
初夏を聴く
新緑の下
芝生に腰を下ろして
僕は耳を澄ませた
木漏れ日が地面に描く幾何学模様が風に揺れている
夏色に染まり始めたばかりのまだ淡い
未熟な空色のイマソラに白線を引きながら
遠のく飛行機を見送った
空に向かってスマホを斜めに構える彼女の
耳元のイヤリングはすっかり夏色で
はしゃぐ度にきらりと揺れて眩しくて...
そして、なんだか、ドキドキする
...
スマホカメラの正方形に飛行機がうまく収まらなくて口惜しそうにまだソラをみあげている彼女に声をかけた。
ねぇ、ここに座って、
一緒に耳を澄ましてごらん
今年一番の初夏が聴こえるよ。
肩が触れそうで触れない隣に彼女は座った
...
しばらく静かに彼女と空を見ながら
耳を傾けていると
飛行機が再びイマソラに白線を引き始めた
でも、彼女は座ったまま
目を閉じて静かに耳を澄ませている
僕は彼女との距離をそっと狭めて顔を近づけると
気を利かせた初夏が甘いラブソングを奏で始めた__
お題「恋物語」
#シロクマ文芸部
お題「初夏を聴く」から始まる小説・詩歌
#86 深夜のラーメン
終電逃して千鳥足
どうやって帰ろうか?
悩みながら店をでて
とりあえず、入った屋台で
食べた〆のラーメンは
なぜ、あんなにもウマかったのか?
お題「真夜中」
#85 捨てられない者
いつの間にか部屋に住み着いた「後悔」をアパートのゴミ置き場に人目につかぬよう夜中にそっと捨てた
やれやれと部屋に戻るとヤツ(後悔)はゆらゆらと部屋に立っていた。
むむぅならばもっと遠くに捨てにいくか…?
それから僕は何度も場所を変えて何度もヤツを捨てた
けれど、ヤツは必ず先に戻ってゆらゆらと無表情に立っている
....
何回捨てたのかよくわからなくなった頃、僕はついに諦め、このままヤツと一緒に暮らすことにした。
「もう好きなだけここに居ていいよ。同居記念に一緒にビールでもどうだい?」
はじめて「後悔」に話かけた
でも、「後悔」はゆらゆらとしながら透明になりやがて消えてしまった...
なんだ...わざわざ捨てに行かなくても良かったのか.
拍子抜けな気分に何故かさみしさが混じっているそれらをごまかすように僕は缶ビールを一気に飲み干す。
いつもよりビールが苦く感じるのは受け入れた苦い思い出のせいなのだろうか.…
お題「後悔」
#84 大人になって...
子供のままでいられたら
と思っていたこともあったけど
どこからどう見ても「大人」になって思うのは
子供の頃に思っていた「大人」は
実はさほど「大人」ではない。
ある意味みんなずっと子供のまま。
お題「子供のままで」
#83 愛がある限り
良くも悪くも
オトナになってしまって
叫ぶほどのスタミナはもうないけれど
ささやくくらいならまだまだできそうだ
そこに愛がある限り...
お題「愛を叫ぶ。」