メジロ推し

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3/16/2023, 4:25:06 AM

満天の星を一度だけ見たことがある。
田舎町を走る途中、運転に疲れて自販機のある小さな駐車場に車を停めて、空を見上げた。
星座の区別をつけようもない、溢れるばかりの星空だった。
都会の空は明るく、オリオン座やカシオペアがすぐに見つかる簡単な夜空ばかり見ていたから、思わず「どうして」と呟いた。
こんなにも溢れる星を、いつもとり零しているんだ、と。
都会にはいっとう明るい星しか映らない。その背景にある宇宙はひっそりと姿を消している。ぼんやりとそんなことを想った。

あの星空を思い返しながら、見上げればやはり空には幾つかの星がか細く光るばかり。星座をなぞるのがあまりに簡単で、すぐに窓から離れた。


お題 星が溢れる -『夜空』

3/13/2023, 1:25:11 PM

「ずっと」を永遠だと思ってた。
「ずっと」を一生のことだと思ってた。
「ずっと」を遥か未来の話だと思っていて、「ずっと」をあと数年のことだとも思っていた。
「ずっと」って卒業までのことで、「ずっと」ってたぶんあの一瞬の出来事だった。

「ずっと」

そう舌を転がした時、ちょっとだけ嘘の味がした。きっと期限つきで、終わりがある予感がした。
それでも、そんな予感から目を反らしていたかったのは本当で、だからまっすぐ口に出した。

「ずっと隣にいるよ」

嘘ではなかったんだよ。
後先なんて忘れて、目の前にのめりこんだだけ。終わりが来るって、気づかないふりをしていた。


お題 ずっと隣に -『恋は盲目』-

3/12/2023, 11:30:17 AM

もっと、と手を伸ばすのに勇気がいるようになったのは、何歳からだったかな。手を伸ばす先が、人ではなくて本やスマホばかりになったのは、たぶん小学校の内に。この手の中には世界があるんだと思ったし、答えは色々転がってた。
でも、きみがなにを考えてるかなんて、どの本にもSNSにものってない。きっとこうだ、こうに違いないって思うのは簡単なのに、きみの顔を見ると自信がなくなる。間違ってたらどうしようってずっと怖くて、正解が欲しくてインスタとかツイッターとか見てる。慰めるようなラブソングも散々聞いた。
きみに手を伸ばそうとすると、急に私の持ってる世界のどれもが間違いに見えるから不思議。
知った気になりたいんじゃない、私はきみが知りたい。そう言ったら、きみは教えてくれますか。

お題 もっと知りたい 「答え合わせ」

3/10/2023, 10:30:08 AM

地べたの白い鳩ぽっぽ。こいつが狙われず餓えもせず憩いの場でさも堂々と闊歩できる光景を、ただの風景にできることが平和というのだろう。その礎には愛と無関心が鎮座しているんだ。
公園でくたびれてダンボールに引きこもりながら思った。くるっぽ。


お題 愛と平和 - 『公園のハト』