秘密の場所
「でも、これからも俺の隣で本、読んでてくれる?」
あれから2ヶ月。
大学生になった、昼下がり。お互いの大学近くの公園。温室があり、雨もしのげる便利な場所だ。その中のさらに奥まったところにベンチがあり、そこが俺と彼女の秘密の場所だ。
「秘密の花園みたいやね」
と彼女はいうが、本を読んでこなかった俺にはさっぱり…。それでも、この場所をお互い気に入り、毎週訪れている。
彼女が読んでいる本は、俺にはハードルが高すぎて全く手が出せないが、映画のノベライズやライトなエッセイなど、少しずつ読むようになった。読み始めると、次々読みたくなる彼女の気持ちがわかるようになった。
やっぱり、彼女の隣は心地いい。あの頃は手の届かなかった彼女が、すぐ隣で、俺にひっついて本を読むようになった。それだけでも十分幸せなのだが…。
かまって欲しいと、思ってしまう。
ふぁぁ…
大きな欠伸が出た。
ゴロンと体勢を変えて、彼女の膝に頭をのせる。
「なぁ、そろそろかまってよ」
「あと、もうちょっとやから、待って」
「ん…」
ダメか…。完全に本の世界に入ってしまってる。
しばらくは、かまってもらえない。見上げる格好で、彼女の様子を眺める。
美人だし、可愛い。俺だけが独り占めしたい。
パタン
「お待たせ」
「んー…待ちくたびれた」
伸びをしながら、彼女の頬にそっと唇で触れる。
「ご飯、行くか」
真っ赤な彼女。
そんなに驚かなくても。
もう何度もしてるのに。
慣れてもいいだろうに。
「可愛いなぁ」
こんな彼女、絶対外で見せたくない。
だからここは、俺と彼女の秘密の場所。
約束
「でも、これからも俺の隣で本、読んでてくれる?」
すぐに答えを出すことはできなかったけれど、私は今も彼の隣で本を読んでいる。あの頃よりも、もっと近い距離で、本を読んでいる。あれから続いてる、約束。
本を読むのは私の影響だと彼はいうが、真面目な面を持ち合わせていたことは知っていたし、なんだか律儀なところがあるから、私に合わせてくれているのかなぁと思っている。私の隣で、静かにページを捲っている。
彼の隣は心地いい。初めは、ただドキドキして本の内容が入ってこなかったが、今は本を読む時に彼に引っ付いているのが、当たり前になった。彼の体温を感じながら、ページを捲る時間が心地いい。
ふぁぁ…
大きな欠伸。
ゴロンと体勢を変えた彼は、私の膝に頭をのせる。
「なぁ、そろそろかまってよ」
「あと、もうちょっとやから、待って」
「ん…」
また、ページを捲る音だけが響く。
パタン
「お待たせ」
「んー…待ちくたびれた」
そっと私の頬に、彼の唇が触れる。
「ご飯、行くか」
顔が熱くなる。
彼の唇が触れたところが、火傷したみたい。
こんな些細なことなのに、まだ慣れない。
「可愛いなぁ」
彼の隣で、約束を続けていたい。
ココロ
オズの魔法使いでブリキの木こりは心が欲しいと言った
たぶん、1番心優しいのがブリキの木こりだと
子どもながらに思ってた
心がないけど優しいのにと
欲しいものは実はもう持ってるものかもしれない
星に願って
もう忘れたいのに
なんで思い出すんだろう
夜が明ければ
全部消えてしまえばいいのに
輝く星たちと一緒に
君との思い出も
君の背中
追いつきたい
そしたら振り向かせたい
ねえ、こっち向いてよ