夜、森の中をどんどんと奥に歩いていく。黒い木々の間から見える空は、無数の星がきらめいている。普段は、ちっとも気づいてなかったけれど、こんなにもたくさんの星があったのだ。
どんどん小道を突き進んでいく。枯葉や木の香りに包まれて、どのくらい歩いただろうか。突然、ぱぁーっと視界がひらけた。
空が大きくはっきりと見える。たくさんの星がきらきらとまたたいて、少しくらくらした。それでも見ていると、星がふるふる揺れて、ぶわっと溢れ出した。そして、光の筋を残しながら一つ、また一つと落ちてきた。
その時初めて、目から、ぽろぽろ、ぽろぽろと涙がこぼれていることに気づいた。
「星が溢れる」
何か分からない苛立ちと、自分のことが嫌すぎると、自分で自分を傷つけようとしていた。いつも諦めのような、でも、何かに期待するかのような、時々哀しみをたたえたような不思議な瞳をしていた。
その瞳の奥に、傷つきやすい本当の自分を押し込んでいた。何が変えたのだろう。年を重ねるにつれ、自然と心がほぐれていったのだろうか。人と関わる職業のせいだろうか。久しぶりに見た君の瞳は、優しくて、とても安らかだった。
「安らかな瞳」
一人でなんでもやって、一人で生きていく。一人でも全く大丈夫なんだけど、ふと、何だかねと思う時がある。
誰かがいてくれたらいいのだけど、その一瞬は満たされても、また違う煩わしさがやってきたりする。
でも、なんだか変な話ではないのだけど、よく分からない大きな何か、創造主のようなものが本当はずっと見守ってくれていると思うと、ちょっと元気がでてくる。
「ずっと隣で」
好きになったら、もっと君のことを知りたいと思う。でもそのうちに、どんなに近くにいたって、ずーっと一緒にいたって、君の全てを知ることはできないってことに気づく。
よく考えたら、そのよく分からない部分って私にもある。自分でもよく分からない。そんな部分を、案外君のほうが知っていたりする。
誰かを好きになると、どんどん浮き彫りになる知らなかった部分。それが、時々辛かったりもするけれど、楽しくもある。結局、よく分からない部分があるから、魅力的なんだと思う。
「もっと知りたい」
いつもと同じように目が覚めて、同じような一日を過ごす。そんな日々を、退屈だなんて思ったりする。変わりばえのしない日常を、いとおしく思うことなんて、忘れてしまっている。
ああ、そのために、何かその穏やかな日常を奪うようなことが起こるのだろうか。平穏な日々がいかに素敵な時間だったかを思い出すために。
「平穏な日常」