まだ、終わらせないで
君には計り知れないほどの魅力があるんだよ
その純粋な瞳
笑うとできるエクボ
みんなを笑わせるユーモア
その全て君が一番なんだよ
そして僕はその全てに惹かれているんだ
僕の近くにいろとも
ずっと笑っていろとも言わない
だから、まだ、
泣き崩れる僕を見て君は困ったように笑う
「ごめん、もう、無理だよ」
君の体が学校の屋上のフェンスの上で
ぐらりと揺れる
僕は手を伸ばそうとした、でも届かなかった
「バイバイ、君のこと、結構好きだった」
君は落ちた
笑っているようにも
泣いているようにも見えた
僕は頭が真っ白になるとは
このことかと理解した
僕は君が言った言葉を反芻する
一番終わってほしくないものが
崩れ落ちていく瞬間だった
体が熱っている
辛いと言う感情を押し殺して
休み時間に学校で黙々と作業を進めていく
そうするうちに集中力が高まる
なぜか僕はそういう時ほど頑張ってしまう
「将吾じゃん、なんか顔色悪くない?」
そう言って駆け寄ってきたのは葵だった
心配そうに上目遣いでこちらを覗く
葵はこちらをおとそうなどと言う気は微塵もないのだろうが、ドキドキする
「心配だから、保健室、行こ?」
強引だな、こっちは集中してんのに
そんな思いも届かず葵はそう言うと
僕の手をとって保健室へ連れて行った
僕は別の意味で熱が出そうで
それを隠すのに必死だった
隣の彼女をチラッと見る
何となく赤い
どうやら彼女も微熱が出ているようだ
死ぬなら太陽の下がいい
太陽という光に囲まれて
明るい気持ちで死にたい
ナイフがきらりと光るのを見て
僕は微笑む
ふと君のことを思い出す
君はどんな気持ちで死んだのだろう
あの暗い密室で
主人公がラスボスを倒した物語があるとする
でもそこにはラスボスを倒せなかった物語も存在する
でもそんな物語を選ぶ人はいない
都合が悪すぎるからだ
いつも僕たちはそうやって都合のいい、綺麗事の物語を選んでいく
でもたまには綺麗事ではない物語も選んでみてもいいのではないのだろうか
暗がりの中でうずくまる
誰か僕を見つけてよ
そう、叫べたら
ずっと一人ぼっちなんだよ
そう、嘆けたら
誰かが一つの愛情でもくれたら
僕は変われたのかな
僕は僕の中の深い深い闇の中に飲み込まれていった
ー母さんも父さんもあいつらもみんな堕ちちゃえばいいのにー