(あいつを…殺してやる…)
((だめよ!そんな!かわいそうじゃない!
家族だっているかもしれないのよ!))
(家族?
そんなもの!
いるならそいつらもろとも皆殺しにしてやりたいくらいだ!)
((!!))
俺は凶器を持って振りあげた。
((…ふるえてるわ…
ほんとはこわいんでしょ?))
(ああ、こわい。
こわいともさ。
でも、やらなきゃならないんだ。
やらないととんでもないことになってしまうから…。)
俺は凶器のスリッパを振り下ろした。
部屋の隅にいた漆黒のアイツに………
「心と心」
市街地の何階かにある俺の部屋。
カーテンも閉めず灯りもつけず
明滅する光と闇の狭間でうずくまる。
「さよならは言わないで。」
あの日彼女に言ったけど
別れは明確。
空っぽになった俺は幾日も眠れず
やがて夢と現実を彷徨いはじめる。
わけがわからない、
区別のつかない状態が
眠れないほどひどくなる。
部屋にいたはずの俺は今
ペンローズの階段みたいな
エッシャーの絵の中みたいな
階段がたくさんあるだけの空間で、
そのうちの一つを
逆さまになって歩いている。
ふつうに歩いてたはずなのに
いつ裏返ったのか。
部屋の片隅で小さな影がうずくまっている。
傍らには扉がある。
この部屋からの、もしくは次の部屋に続く出口だろう。
影は俺に扉の鍵を渡す。
(ありがとう、ごめんね。)
彼を置いていくのが気がかりだ。
手を差し出し、その手を繋いでいっしょに部屋を出るべきだっただろうか。
彼は俺とおんなじ、あそこに迷い込んだ仲間だったろうか。
ごめんね。
今なんにも考えられない。
なんにも判断できないんだ。
何でもないフリをして、俺は鍵を受け取り扉を開けて足を踏み出す。
そこにあるのはまだ続く混沌か
現実か。
170作突破記念
「何でもないフリ」
前回 12/2 160作目。
10作ごとぐらいにしている。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。
たまに見かける犬と猫と鳥なんかがなかよく暮らしてる動画。
特に鳥がいるとひやひやしちゃうけど
かわいい祭りで癒されちゃうんだよな。
毛づくろいしたり
いっしょに眠ったり…。
「仲間」
ある晴れた日に
手を繋いで川沿いを歩こう。
それで 今まであったいろんなことの話をしよう。
「手を繋いで」
部屋に飾られた霞草のドライフラワーを抱える。
「今までありがとう。」
せめてもと紙袋に包んで捨てた。
霞草の花束は、センスのないあいつから贈られた一番嬉しかった贈り物。
かわいくて、気に入ってた。
でも、ごめんね。
見てるとあいつを思い出しちゃうから…
「ありがとう、ごめんね」