sunao

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12/12/2024, 1:05:30 AM

市街地の何階かにある俺の部屋。
カーテンも閉めず灯りもつけず
明滅する光と闇の狭間でうずくまる。

「さよならは言わないで。」
あの日彼女に言ったけど
別れは明確。

空っぽになった俺は幾日も眠れず
やがて夢と現実を彷徨いはじめる。

わけがわからない、
区別のつかない状態が
眠れないほどひどくなる。

部屋にいたはずの俺は今
ペンローズの階段みたいな
エッシャーの絵の中みたいな
階段がたくさんあるだけの空間で、
そのうちの一つを
逆さまになって歩いている。

ふつうに歩いてたはずなのに
いつ裏返ったのか。

部屋の片隅で小さな影がうずくまっている。
傍らには扉がある。
この部屋からの、もしくは次の部屋に続く出口だろう。
影は俺に扉の鍵を渡す。

(ありがとう、ごめんね。)

彼を置いていくのが気がかりだ。

手を差し出し、その手を繋いでいっしょに部屋を出るべきだっただろうか。
彼は俺とおんなじ、あそこに迷い込んだ仲間だったろうか。

ごめんね。
今なんにも考えられない。
なんにも判断できないんだ。

何でもないフリをして、俺は鍵を受け取り扉を開けて足を踏み出す。

そこにあるのはまだ続く混沌か
現実か。





170作突破記念
「何でもないフリ」

前回 12/2 160作目。
10作ごとぐらいにしている。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
インターバル的なもの。

12/11/2024, 4:15:46 AM

たまに見かける犬と猫と鳥なんかがなかよく暮らしてる動画。
特に鳥がいるとひやひやしちゃうけど
かわいい祭りで癒されちゃうんだよな。
毛づくろいしたり
いっしょに眠ったり…。



「仲間」

12/9/2024, 11:54:37 PM

ある晴れた日に

手を繋いで川沿いを歩こう。

それで 今まであったいろんなことの話をしよう。



「手を繋いで」

12/9/2024, 5:48:30 AM

部屋に飾られた霞草のドライフラワーを抱える。

「今までありがとう。」

せめてもと紙袋に包んで捨てた。

霞草の花束は、センスのないあいつから贈られた一番嬉しかった贈り物。

かわいくて、気に入ってた。

でも、ごめんね。

見てるとあいつを思い出しちゃうから…





「ありがとう、ごめんね」

12/7/2024, 7:15:36 PM

「ああ、もうだめだ…
 もうだめだ…」

「どしたん?」
ダーニーが言いました。

「聞いてしまったんだ…
 今までなんとか見つからずここでやり過ごしていたけれど…

 今度大掃除をするんだって!」

「ああ…」

「もうだめだ!!」

わっ、とわたぼこりんが泣き出しました。


「そうなんだー。ぼくは見つけてほしいんだけどな。」
そばにいたキラキラのスーパーボールが言いました。

「ぼくは夏祭りのすぐ後からずっとここにいるんだよ。
 夏祭りの時はぼくを手にとってよろこんでいたから、
 ぼくを見つけてくれたらきっとよろこんでくれるんじゃないかなー。」

「それはどうかな。」
冷たい声がしました。

「お父さんかお母さんに見つかっちゃったら捨てられちゃうんじゃない?
 きみを手にしてよろこんでたのはどうせこどもたちだろう?
 でもこどもたちなんて掃除のじゃまはしても手伝いなんてしないだろう?
 だからきみは捨てられるのさ!」

自暴自棄になったわたぼこりんの八つ当たりです。

「そ、そんな……!」

キラキラスーパーボールもわたぼこりんといっしょに泣きはじめました。

「やれやれ…」

「ダーニーはどうしてそんなに落ち着いてるの?」

「そうだなあ。
 ぼくはどうせ寿命が短いし?
 そーゆーのはどーでもいーかな。

 まあ、ほら。
 けっきょくだれにも見つからないって可能性もあるんだし。」

「そんなのいやだ!

 ぼくは、見つかってほしい!」

スーパーボールが言って、また泣きました。

うわああああ。


部屋の隅ではわたぼこりんとスーパーボールの泣き声が。

やれやれ。と頭を掻きながら、大掃除になったらどこに行ったら見つかりにくいかな。と考えるダーニーなのでした。




「部屋の片隅で」

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