sunao

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10/1/2024, 11:51:40 AM

たそがれは
すべてを溶かす

空から青色がおりてきて、紫、赤、黄と夕暮れを溶かしていく。

色分けされたゼリーのように空が溶ける。

小さな三日月は空の割れ目。

逢魔が時の不思議なものたちがこぼれ落ちてくる。

すべてが溶けてまざってる。

たそかれたそかれ

となりはだあれ?




「たそがれ」

9/30/2024, 10:29:42 PM

月の上でうさぎが二羽、ブランコを漕ぐ。

うさぎの前には青い地球が浮かんでいる。


「今日も地球が浮かんでいるね。」

「ああ、浮かんでいるね。」

「いつもとおんなじ場所に浮かんでいるね。」

「浮かんでいるね。」

「いつもとおんなじ景色だね。」

「あまり変わらないね。」

「明日もきっと変わらないね。」

「うん。きっと変わらないね。」

「明後日もきっと変わらないね。」

「うん。きっと変わらないね。」

「きっとずっと変わらないね。」

「うん。きっとずっと変わらないね。」


横に並んだ二羽のうさぎ。

一羽が前に出るともう一羽は後ろに。

互い違いになりながら漕いでいる。




「きっと明日も」

参考 : 9/11「カレンダー」
   9/17「花畑」
   9/19「夜景」
   9/28「別れ際に」

9/29/2024, 12:39:17 PM

静寂に包まれた部屋でドビュッシーの ' 月の光 ' をピアノで弾く。



「静寂に包まれた部屋」

9/28/2024, 1:31:03 PM

月の上にて─



「ちょっと散歩に行ってくる。」

と言ったら、
紙でできたコップのようなものを渡された。

けっこう歩いた時、コップについてた糸がぴんと張った。

なんとなくコップを耳にあてると、

『きこえますか。
 きこえますか。
 どうぞ。』

と聞き慣れた声がコップの中からした。

「きこえてます。
 きこえてます。
 どうぞ。」

とコップに向けて話す。

『そっちの様子はどうですか。
 どうぞ。』

「いつもと変わらない月の上ですよ。
 どうぞ。」

どうぞ。どうぞ。と話し続ける。


何をしにきたんだっけ?





「別れ際に」

参考 : 9/11「カレンダー」
   9/17「花畑」
   9/19「夜景」

9/28/2024, 2:17:56 AM

自転車で帰っていると通り雨にあった。

ぽつぽつぽつ、と降ってきて、
とたんにざーっ、と。

「最悪。」

髪から肩からびしょ濡れだ。

ため息。

ふと違和感を感じて自転車を止めて頭上を見る。

気のせいか?
自分サイズの小さな灰色の雲が、すぐ上で自分にだけ雨を降らせている。

ガッと雲を掴むと自転車のかごに入れ、鞄を重しに載せて家まで帰った。

家に着くと、雲を掴んで、
「降らすな。」
と言って家に入った。

テーブルの上で手を離し、
「座れ。」
と言うと、
雲はテーブルの上に降りた。
雲から目が二つ覗き、こちらの様子を見ている。

俺はタオルで頭を拭きながら、お湯を沸かしはじめた。

「インスタントのコーンスープ、いらないだろ?」

いちおう聞いた。
雲は体を少し揺すって、首を横に振っているようだった。

雲はもじもじそわそわ、まるでトイレに行きたいこどものようになってきた。

「なんだ?
 降らせたいのか?」

頷くように体を動かす。
チッ、と舌打ちをする俺。

「そこ。
 流しの上。」
そう言って流しを指さすと、
雲はそろーっと、流しの上まで行って細かい雨を降らせ始めた。

ため息。

家の湿度が上がりそうだ。と思う。

トポポポポ

カップにお湯を注ぎ、スプーンで混ぜる。

椅子を少し流しの方に向けて座り、流しの方を見る。

「……それで?
 どういう了見で俺をこんな目に遭わせた?」

「……………。」

「俺にだけ降らせやがって。」

「……………。」

「夏ならまだいい。
 ちょっと涼しくなるし、すぐ乾くし。
 でも今の季節はだめだ。」

俺は雲を相手に説教を始めた。

風邪を引いてしまうかもしれない。とか、
濡れたらその後どれだけめんどくさいかとか。

雲は雨を降らせながらおとなしく聞いていた。


ふうっ。

とりあえず言うだけ言って気が済んだ。

「まあ、あれだ。
 お前にも役割ってもんがあるかもしれんしな。」

勝手口をカラカラと開けて、逃げるように促した。

雲はおずおずと外に出て行った。



三日後。

おれの自転車の1メートルほど後ろで、またあいつが雨を降らせている。

一体なんなんだろう。





「通り雨」

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