ツバメたちがいなくなった。
青空を見上げて思う。
おいしそうないわし雲。
エノコロ草の揺れる草むら。
通り抜けるとひっつき虫がたくさんぼくの黒い毛についてしまう。
だからぱりぱりぱりと足で掻いてある程度落として、シロちゃんの家に行く。
ニャウー
縁側から降りてすりすりっと擦りつく。
チリチリチリッ
首の鈴が鳴る。
飼い主さんをちらりと挨拶するように見て二人で出かける。
浅く水の流れる川まで行って喉を潤し、バッタをつついたり、木や草の陰で過ごす。
日が傾いてきたらももいろに焼き上がったいわし雲を見て、
そのうちぼくの目の色みたいなまるい月を並んで眺めて
そろそろ帰ろうか。
そう言ってお家まで送ってお別れをする。
「秋恋」
セミの死体と思しきものにはさわらない!
これは忘れないように、大事にしたいこと!
死んでるかどうかなんてわからないんだから!
セミファイナルがこわい!
心臓にわるい!
「大事にしたい」
時間を止めたら、降ってるものの動きも止まる。
例えば冬なら
降ってる雪の動きを止める?
そしたら地面に着く前の雪をガラスの器によそって、シロップをかけて、かき氷にして食べる?
きっとお腹がいたくなるね。
春なら
地面に着く前の桜の花びらをたくさんとって、
桜茶のために塩漬けにする?
夏なら
雨を止めて…
止めてもその中を歩いたらけっきょくずぶぬれ。
止んでるうちに止めたいね。
秋なら…
落ち葉の掃除が楽になるのかな?
「時間よ止まれ」
月は大気がないから一日中空が黒い。
その中で地球は一番大きくて、いつもだいたいおんなじ場所に見えてる。
夜の地球は、暗闇に金色の粒々がちらちらしててとてもきれい。
ぜんぶ昼の地球も、ぜんぶ夜の地球も、その間の地球も、ぜんぶきれいだと思う。
ラピスラズリみたいな瑠璃色の地球は、たくさんの星空の中を、オルゴオル仕掛けみたいに、ゆっくりと回る。
僕らはたまにボートに乗って、もっと近くから地球の夜景を見に行く。
夜の地球の上にいると、金色の粒々の海の上にいるみたい。
所々光が集まっていたり、線になっていたり。
そうして僕らは旅を終えて、また銀色の星に戻る。
《月のうさぎのノートより》
「夜景」
参考 : 9/11「カレンダー」
9/17「花畑」
一昨日、餅つき用のお米をもらいに地球に行った。
「くださいな!」
そう言うと、おじさんが、ちょっととまどったようすだったけどお米を持ってきてくれた。
2つに分けられたお米を、僕たちのリュックに入れてくれた。
帰ろうと思ったら、
たくさんお花の咲いてる大きな花だんを見つけて、
きれいなのでじいっと見ていたら、おばさんがきて、
「持っていくかい?」
と言うので、大きくうなずいた。
「これがコスモス
これがセンニチコウ
これがサルビア
これがススキ」
根っこごともらったお花たちを、あちこちの小さめのクレーターにお水をためて散らばして植えていた。
「お花畑だ!」
満足そうなうさぎ。
もう一羽のうさぎがふふふっと笑った。
「あれはさー、もうねだってたよねー。
あんなにじっと見て。」
「そーお?」
そよそよと揺れる草花。
「…きれいだね。」
「うん。いい、十五夜だね。」
うさぎたちの瞳に映る草花たち。
「さあ、雲がもう少ししたらまた晴れるよ。
またひと仕事しなくっちゃ。」
「うん。おもち!おもち!」
みなさんは今日のお月様、見ましたか?
「花畑」
参考 : 9/11「カレンダー」