「明日晴れると良いね。おやすみ。」
「うん、おやすみ。」
「じゃあまたね。」
「また明日ね。」
「まあまあ、明日やるから。」
「もう。」
「うーん残念。」
「よければまた明日覗いてみてください。」
ぐるぐるする夜を越えよう。
嫌なことは明日が解決してくれるさ。
来るか来ないかわからない明日を信じて
では、
また明日
「透明って色じゃないよね。」
「そうだな。透明な色とは不思議な表現だ。」
「うん。でもさ、なんか嫌じゃないね。」
「ああ。少し特別な気がするな。」
「あの人を色に例えるなら?」
「はは、ではせーので言ってみようか。」
「うん。せーの…」
「こういう関係になってだいぶ経つけどさ、いまだにあの人のことは読めないんだよね。」
「そっか。そうかもね…。」
「全部さ、あの人をすり抜けて行く。僕の気持ちも思いも全て。」
「で、他の人にぶつかると。」
「やめろ。その通りだから。」
透明なふたり。すきとおって。
互いのことを見えないまま
この世でいちばん美しいひとと信じ
世界のはしっこで愛を分かちあう。
透明
あの人だったらこうしてくれるのに
あの人だったらこんなこと言わないのに。
気付いたら他の人と比べてしまう。
どんな俳優もアイドルもヒーローも
あなたには敵わない。
不思議ね。いつのまにか
あなたは私の理想の人になっていた。
世界でいちばん素敵なひと。
世界でいちばん大好きなひと。
理想のあなた
「所詮紙切れ一枚の関係だったってことだ。」
出会いは突然で別れも突然…ではない。
一目惚れではなく徐々にゆっくりと距離が近くなりそしてひとつの道を歩むようになった。
「そう、思っていたのは俺だけだったんだ。」
ある日突然道が別れたのか。はたまたやはりゆっくりと道が元に戻ってふたつになったのか。いや。
「そもそもひとつになんかなっていなかったんだ。」
きれいさっぱり無くなっていた。はじめからあんな人はいなかったんだとそう思えてしまうほどに。
「早く別れろ。」
なんだって?話聞いていたか?もう別れたんだよ。
そう声をあげる前にぐい、と突然左腕を掴まれそして
「未練たらたらじゃねえか。早く捨てろ。」
薬指の誓いと俺の目を同時に睨みつけてきた。
「無理だ。一生な。」
俺は少し滲む視界に奴を捉えて睨み返した、はずだ。
「そうかい。」
ち、と小さく舌打ちをして奴は目を逸らした。
「なら実力行使だ。」
ずるりと圧迫していた何かが無くなった感覚。
喪失感と安堵感が一気に押し寄せて更に視界は滲んだ。
「お別れはいきなりやって来るもんだ。」
体の力が抜けて立っていられなくなる。
「俺がしばらくここにいてやる。離れねえから安心しろ。」
さようなら。俺の清き人生。
突然の別れ
「じゃあ恋人同士にならなくていいの?ほんとに?」
「ええほんとに。」
「そうなんだ…。」
好きな人がいたらその人とどうこうなりたいっていうのが恋愛じゃないの?知らないけど。
「だからこれは恋なの。永遠の恋。」
うーん本当か?いやこの子はこんな嘘はつかない。知らないけど。
「じゃ、じゃあさ。もしそのおじ…あ、その、彼がさ。あなたのことを好きだって言ったらどうする?」
「え、それはありえません。あるはずが無いの。」
「…たとえばだよ。たとえば。」
この子かわいいからありえる話なんだよな。さあどうする?
「…そうなれば、この恋は終わり。さよなら。」
「愛に変わる?」
「変わらない。」
きっぱりか。なるほどこれは世間一般からしたら愛ではなく恋というかむしろ変なんだろうな。知らないけど。
「じゃああなた以外の好きな人がいたら?」
「それはいいよ。」
「…いいんだ。」
「愛は不自由だけれど恋は自由だもの。」
なるほどよくわからない。難しいね恋愛って。
まあまあとりあえずこの恋物語が早々に完結しないことを願おう。なんかおもしろそうだから。
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