粉末

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「所詮紙切れ一枚の関係だったってことだ。」
出会いは突然で別れも突然…ではない。
一目惚れではなく徐々にゆっくりと距離が近くなりそしてひとつの道を歩むようになった。
「そう、思っていたのは俺だけだったんだ。」
ある日突然道が別れたのか。はたまたやはりゆっくりと道が元に戻ってふたつになったのか。いや。
「そもそもひとつになんかなっていなかったんだ。」
きれいさっぱり無くなっていた。はじめからあんな人はいなかったんだとそう思えてしまうほどに。
「早く別れろ。」
なんだって?話聞いていたか?もう別れたんだよ。
そう声をあげる前にぐい、と突然左腕を掴まれそして
「未練たらたらじゃねえか。早く捨てろ。」
薬指の誓いと俺の目を同時に睨みつけてきた。
「無理だ。一生な。」
俺は少し滲む視界に奴を捉えて睨み返した、はずだ。
「そうかい。」
ち、と小さく舌打ちをして奴は目を逸らした。
「なら実力行使だ。」
ずるりと圧迫していた何かが無くなった感覚。
喪失感と安堵感が一気に押し寄せて更に視界は滲んだ。
「お別れはいきなりやって来るもんだ。」
体の力が抜けて立っていられなくなる。
「俺がしばらくここにいてやる。離れねえから安心しろ。」
さようなら。俺の清き人生。


突然の別れ

5/20/2024, 6:24:19 AM