そんなものある?
この世のものは金で買えるよ。
愛でも友情でも地位も名誉もなんでも。
それに愛で金は買えないだろ。
そうさね。この世の大体のものはお金で買える。
でもたしかにお金で買えないものはある。
君は賢い。わかっていてそう言うのだろう。
わかっているよ。
金で買えないものもある。
それがめちゃくちゃ厄介だということも。
それが金よりも大事な存在だということも。
それはあんただってことも。
お金より大事なもの
月だけが煌々と輝く静かな夜
可愛い君をシーツの海で捕らえて独り占めしようとしたがそれは叶わなかった。
今日の君は美しく恐ろしいセイレーンで
海に沈められたのは俺の方だったのだ。
君の声に魅了された哀れな男はもう逆らえない。
しかしまあ指の一本まで食い尽くされて君の血肉になれるならそれもまた良い人生だ。
月のベールを纏ったセイレーンは鳥の羽のように軽いキスをして甘い毒を囁いた。
夜の海にふたり沈んで夢を見続ける。
朝になればこの毒は溶けて消えてしまうから。
月夜
無駄に細くて白い右手の薬指に所有物の証が光る。
これが我々の絆かね。
嫌じゃないの。
もちろん。何なら左手でも良いくらいだ。
残念ながら絆、だなんて綺麗な気持ちは込めていない。
これは呪い。自由を奪う拘束具。
最もこんな物であんたを縛れるとは思えないけど。
なるほど確かにこれは絆、だな。
絆
たまにはツンと突き放した態度をとってみて
あなたの気を引こうとしても全然だめ。
だって大好きなんだもん。
ツンじゃなくてムスっとした顔。
怒ってるんじゃないことは知ってるの。
そういうとこもかっこいいけど
ねえたまにはそのムスっとした顔で
あなたから触れて。
たまには
好きだよ愛しているよだけじゃ足りないから
贈り物をしたくなるんだ。けれど。
バッグ、アクセサリー、服、靴、ぬいぐるみ…君はどれも興味無いようで。
君の好む本は頭の無い俺にはわからない。
花は好きなようだけど少しで良いって言っていたし。
それならばと
今日はめちゃくちゃ早起きした。最高の朝ごはんを作るためだ。
ベーコンエッグ、クリームチーズ、サラダにスープ。
オレンジジュースでもカフェオレでもいつでも出せる。
ついでにパンなんか焼いちゃってさ。
テーブルに一輪だけのガーベラを添えて。
そうだバトラーは身なりも整えないとな。
おはよう、と可愛い小鳥のさえずりが聞こえた。
今日も素敵な1日になりますように。
大好きな君に