月だけが煌々と輝く静かな夜
可愛い君をシーツの海で捕らえて独り占めしようとしたがそれは叶わなかった。
今日の君は美しく恐ろしいセイレーンで
海に沈められたのは俺の方だったのだ。
君の声に魅了された哀れな男はもう逆らえない。
しかしまあ指の一本まで食い尽くされて君の血肉になれるならそれもまた良い人生だ。
月のベールを纏ったセイレーンは鳥の羽のように軽いキスをして甘い毒を囁いた。
夜の海にふたり沈んで夢を見続ける。
朝になればこの毒は溶けて消えてしまうから。
月夜
3/7/2024, 2:54:16 PM