好きだよ愛しているよだけじゃ足りないから
贈り物をしたくなるんだ。けれど。
バッグ、アクセサリー、服、靴、ぬいぐるみ…君はどれも興味無いようで。
君の好む本は頭の無い俺にはわからない。
花は好きなようだけど少しで良いって言っていたし。
それならばと
今日はめちゃくちゃ早起きした。最高の朝ごはんを作るためだ。
ベーコンエッグ、クリームチーズ、サラダにスープ。
オレンジジュースでもカフェオレでもいつでも出せる。
ついでにパンなんか焼いちゃってさ。
テーブルに一輪だけのガーベラを添えて。
そうだバトラーは身なりも整えないとな。
おはよう、と可愛い小鳥のさえずりが聞こえた。
今日も素敵な1日になりますように。
大好きな君に
今日はたのしい、か。
世間ではひなあられ、ちらし寿司、白酒…今はケーキかな。別に私にとっては何も特別なことはない。
何せ 女の子 のお祭りだ。
そうだ肝心のおひなさまを忘れていた。
うちにおひなさまはいなかった。
それとなく親に聞いてみたら
もうお姉さんだからいらないでしょ、だと。
じゃあお姉さんになる前に買ってほしかった。
ただいま。
おかえり。
いつもと変わらない笑顔が迎えてくれた。
ねえ、冷蔵庫見てみてよ。
そう促され冷蔵庫を開けるとど真ん中に小さなチョコレートケーキが入っていた。
え…なんで。
今日はひなまつりだよ。女の子の日だ。
2つあるけど。
それは、別に、男の子だってケーキ食べても良いじゃないか!
ふふ、そりゃそうだ。ありがとう。
今日はたのしい
ひなまつり
私はろくでもない人間だがね
しかし人間なんだ。
ゴミみたいな世界でも奥底にあると信じている。
信じてしまう。諦めきれないんだ。
何度裏切られても捨てられても嗤われても。
このパンドラの箱を手放すことは出来ない。
いつか来るその日まで負けやしないさ。
だから頼んだぞ。
たった1つの希望
夜はピザを頼むぞ。
朝言った君の言葉を胸に今日を生き延びた。
家に帰れば君とピザが待っている。
ただいま。明らかに浮かれた声で帰宅を告げると
おかえりの言葉と食欲をそそる匂いが出迎えてくれた。
とろとろのチーズ、肉、ちょっと野菜、チーズ、チーズ、チーズ…。
チキンもデザートもコーラまである。
こんなの体に良いわけないが心の栄養なのだ。
君の顔もいつもよりとろけてチーズのようだ。
それを見て俺の心もチーズのようにとろけていく。
もののついでだ。ビールも開けちゃおう。
しあわせ…。さらにとろけた顔で君がもたれかかる。
ん、しあわせ。ふわふわの髪から少し花の匂いがした。
食欲が満たされればまた別の欲が目を覚ます。
ねえ今日夜更かししても良い?
欲望
数日前までは他人だったのに
今では離れたくない親友のよう。
帰りたくないな。
ねえまた来ようよ。
ああ。もちろんだ。
あの、これ、ありがとう。
どうしましまして。今流行っているのかい。
うん。みんな写真撮ってる。
SNSで人気のぬいぐるみ。
服やアクセサリーで飾ったり、旅行先に連れて行ったりいろんな形で可愛がられてる。
別に欲しいわけじゃなかったけどこの人が当たり前のように好きな子を選びなさい、って言うからお言葉に甘えてしまった。
少し寝るよ。何かあったら起こしてくれ。
ん、わかった。おやすみ。
音を立てないように袋からぬいぐるみを取り出す。
両手が少しアンバランスでひと目で気に入った子だ。
無防備に空いた膝にそっと乗せる。
ばれないようにこっそり写真を撮ってすぐに仕舞った。
顔を隠せばSNSにあげてもいいかな。
でもなんか勿体無いな。やめよう。
あと数時間で私達の街に着く。
日常に帰るんだ
列車に乗って