お題『静かな夜明け』
ふと、意識が戻ってきた。何度か、ぱたり、ぱたりと目を瞬かせる。気になってカーテンを手で拭っても、目に光が染みてこない。うっすら、空が藍色になっている。
つまり、夜明け前に目を覚ましてしまった。
しかも、嫌なことに、きちんと目が覚めた。
二度寝を決め込むことも許されない、というわけである。
僅かにため息をこぼして、カーテンから手を離した。
予定まで少々時間がある。睡眠へ回せない分、さて、どうしたものか。
枕に顔を埋める。
今日の予定はなんだったか。ぼんやりと虚空へ目をやりながら、まだ始まってもいないのに、スケジュール帳を頭の中で開く。
一つ一つの出来事を考えて、ああ、やらないと。嫌だなあ。あ、でも、あれはまだ比較的楽しくできそうかな。と、自分の感情を付け足す。
若干、既にやり切った様な満足感を覚えた。
しかし、まだ着手すらしていないことに気づいて、上がりかけた気持ちが再び沈んだ。
ずっと寝られたらな。
そんなことを惚けながら考えていれば、少しずつ部屋よりも外が明るくなってきていることに気が付く。
カーテンの隙間から、少し光が漏れていた。
お題『heart to heart』
腹を割った会話。
そんなの、とても勇気がないと出来ない。やってみようと思ったら、喉の奥がきゅっと締まる。何も言葉が出てこなくなる。
喋ったら、この人から嫌われてしまうのではないのか、と思ってしまう。
親しい人ほど、本音をどんどん言えなくなる。
手放されるのが怖いから。
嫌われたくないから。
相手の中にある私を、好きでいて欲しいから。
親しい人にほど、長くともにすごした人ほど、どんどん向き合いにくくなる。
それが私の大切な人と長く過ごす為の壁だ。
お題『永遠の花束』
「大好き」「ありがとう」「素敵」「愛してる」「最高」「綺麗」「素晴らしい」「美しい」などなど。たくさんの言葉を伝えると、相手の中で、花束の様になる。綺麗な包装紙に包まれて、その人の心の中で咲き続ける。
やがて、その花束は贈ってくれた人へ返ってくるときがある。たくさんの言葉を贈ってくれるようになる。それはいつか、あなたの心の中の花束になり、あなたを素敵に、素朴に、さりげなく、引き立ててくれる。
返って来ないからと言って「寄越せ」というのは違う。しかし、返って来なかったら、少ししょげてしまう。
だから、そんな時は自分から、自分へ花を手向けるのだ。
なあ、あんた綺麗だよ。そういう言葉を向ける人は、綺麗で、最高にイケてる人だ。あんたもよく知ってるはずだ。
ってね。
花束を贈ろうとするその瞬間は、どんな思惑のある悪人だろうと、どんな考えのない善人だろうと、等しく美しいものだ。
あなたは綺麗だね。
お題『やさしくしないで』
人には、優しくされたくない時がある。
惨めになるから。
温もりが離れた時、寂しくなるから。それを感じるくらいなら、最初からいらない。
心の温かさを知りたくない。
冷えた時、またどうしようもなく温まりたくなるから。
温もりを求めた時、気持ち悪がられたり、拒絶されたくないから。
やさしくしないで
お題『隠された手紙』
道を歩いていて、ぽろりと目の前に花びらが落ちてくることがあるでしょう。
それは実は、季節のお便りです。
あなたが下を向いていても、今あなたがどの季節にいるのかを知らせている、大切なお手紙なのです。
是非、よく見てあげてください。