お題『寂しさ』
ふとした瞬間にそれはそこにある。
片方のスリッパ。何も入っていないカップ。リモコンがぽつり。どこにも繋がれていない携帯の充電器。
しんしんとそれは彼らに降り積もる。
部屋に降っていき、部屋に溜まる。
お題『冬は一緒に』
冬はなにかを誰かと一緒にするのが楽しい。
こたつに入ること。
ご飯を食べること。
ゲームをすること。
くっついて、ぬくぬくする。あったかいね
お題『とりとめもない話』
「ねえ、お姉ちゃん、明日迎え頼んでいい?」
「いいよ。休みだし。何時?」
「えー……17時30分に、学校で」
「いいよ。変えんなよ、分かんなくなるから」
「分かった」
「てか聞いて?私の推し、課金したのにガチャで出てきてくんない」
「可哀想に…」
「2万課金したのに……さよならバイト代。気分じゃないのかな」
「そうなんじゃね。」
「え、映画見に行かない?今度。」
「えー…いつ?」
「土曜」
「まあ空いてるけど」
「行きたくないなら大丈夫だけど…」
「んー…」
「ま、当日までに考えといて。なんか買いたいものとか、ついでに買えるし」
「………あー…あの…百均…」
「お、ある?あるならそっち行くでもいい。とにかく出かけてえんだ、私はよ」
「じゃあ、いく」
「ヤッター10時くらいに出るねー」
お題『風邪』
頭がクラクラする。
現実と夢の違いが分からなくて、ふらふらする。今、歩いてる?
テーブルの上にあるリモコンが歪む。おもむろに掴んで、テレビを見ようとしたが止めた。頭が痛くて、情報を頭に入れたくない。
喉がビリビリして、それに伴って耳もじわあ、とする。これ、嫌いだ。
氷枕ってあったっけ?いつも入れてあったかなあ、と思いながら冷凍庫を開けた。無事それはそこにねむっていて、有難くタオルを巻いて敷くことにする。
部屋に行く途中で、さっきまでそこにあったか分からないペットボトルに躓いた。
だいぶ高熱らしく、本当に空気感が分からず、ひやりと体が冷えた。ぺた、ぺた、と歩く。足裏が冷たい。
視線の端で黒い何かが横切った、気がした。
今、私は、夢を見てる?それとも、現実を見ているんだろうか。
お題『雪を待つ』
『ごめん、10分遅れる』
そんな文言と、ごめん!という絵文字。もう、と頬をふくらませて、待つこととした。
いつもあいつは遅れてくる。今回はいいほうだ。最悪、1時間遅れてくることもある。その事態を想像しただけで辟易する。
考えるのをやめた。
寒い。上を向いて、曇った空を見つめた。
これからもっと寒くなることを想像して、頬を擦る。 これから先、ここは粉砂糖がまぶされたような世界へ変貌する。
早く来ないかな。と思いながら、きゅっと目を閉じた。
寒くなってきちゃった。
鼻の上に、ヒヤリと何かが落ちた。
「わ」
上を見上げると、ふわふわした雪が降ってきていた。ああ、降ってきた…と首を横に振る。
「ごめーん」
たたた、と向こうから走ってきた、見知った顔を見つけた。
「雪の方が早いんだけど。」