#雨音に包まれて
今日もひとり、重い足取りで学校へと向かう。
まるで、泥道に足を取られているみたいに。
いつもひとり。今日もひとり。
ずっとずーっと、わたしはひとりぼっちなのかな。
外は晴れていても、あの時から心の雨は降ったまま。
傘をさしても意味のない嫌な雨。
昔の友達の顔も、声も、もう忘れてしまった。
だって、だってあんな奴……
───しんじてたのに。
#水たまりに映る空
雨上がり 外を歩いてみると
想像以上に美しい世界が 広がっている
泣いていた空が じめじめしていた世界が嘘のように
濡れた地面を 太陽が優しく照らす
吹っ切れたように とびっきりの笑顔を見せる空
なないろのきれいなメロディーにあわせて 鳥がうたう
いぬも ねこも 鳥も ヒトも
雨上がりの下で しあわせそうに はしゃぐ
そんな私たちを 優しく見守るそらは
あたたかくて明るい笑顔を 浮かべていた
#約束だよ
「ずっといっしょにいようね!」
その約束は 果たされぬまま 消えてゆく
宇宙の彼方で 切なくひかる 星のように
あのころの私が バカみたい
そんな約束 果たすことなんて できっこないのに
……ねえ私 おねがいだから
その憎いほど 透き通った瞳で 私を見ないで
#傘の中の秘密
ぽつぽつと 雨粒がおどる中
長靴で 水たまりを蹴って遊ぶ
傘もささずに はしゃぎまわる
カエルと うたってみたり
カタツムリと 競争してみたり
アジサイに 触れてみたり
降ってくる雨粒を 口にふくんでみたり
飴が降ってくる妄想をしたり
晴れていても 雨が降っていても
暑くても 寒くても
どんなときでも この世界をたのしんでいた
純粋なあのころに もどりたい
#記憶の海
あおい空を見上げながら、永遠に広がる水面の上を歩くと、美しい波紋が広がる。
美しい空には、映画フィルムが長々とつながっている。
「なにあれ……私と……」
水面の下には、ピアノや本、ぬいぐるみが沈んでいる。
「なんだろう、ここ」
知らないはずなのに、どこか、懐かしい……
知らぬ間に、一筋の光が頬を伝う。溢れて、溢れて、止まらない。なぜこんなにも、悲しいんだろう。胸が詰まるんだろう。
「──あ、起きましたか?点滴、打ちますね」
目に映るのは、白い天井と、優しそうな女の人。
ここは、どこ?私、さっきまで……、……どこにいたんだっけ……?なにを、していたんだっけ……?