『冬になったら』
冬になったら、彼に告白する。
そう決めてから何回の冬を過ごしただろう。
小学校からずっと一緒の彼。
中学生の時からずっと決めていたこと。
今やもう高校の卒業式を間近に控えてる。
彼にはなんでも話せる人良き友人ぐらいにしか思われてないんだろうなと思いながら、
『冬になったら告白する』と決めていた。
でも…実際冬になっても勇気が出ずに出来たことがない。
さらに、彼は大学生からは離れ離れになる。
今年が最後なのだ。
ふぅー…
白い息を吐く。だいぶ寒くなったものだ。
さぁ、彼に告白を。
「ご飯できたよー」
「ありがとう」
「あのね今日はね…」
あの冬から付き合い始めた私たちは結婚し、今は暖かい家庭を築いています。
さぁ。今年も寒くなってきた。
もう一つの物語
愛言葉
「愛してるよ」
『俺も…愛してるよ』
電話の声は、少し恥ずかしそう。
でも、ちゃんと【愛してる】って言って貰えて嬉しい。ちゃんと毎回愛してるよって言うと返してくれる彼。いつしか、それが合言葉のようになっていた。ある日、彼から電話がかかってきた。
『もしもし』
「もしもし?どうしたのかずくん?」
『さっそくなんだけどさ、お金…貸してくれないかな?』
「え?お金?いいけど…どれくらい?」
『ざっと20万。』
「何に使うの?」
『ちょっと事故起こしちゃってさ…』
「ええ?!大丈夫?!」
『俺は大丈夫。で、修理費とかでいるんだけど今そんなに持ってないんだよね…』
幸い、貯金してたお金があるから20万円は出せるけど事故…?
「わかった。その前にかずくん。」
『何?』
「愛してるよ。」
『…うん、俺も。』
この時から、違和感はあったのだ。彼が【愛してる】を言わなかったこと。車もバイクも乗ってないのに事故を起こしたということ。
そして、この電話から3日後、街中で腕を組んで歩いている親友と彼の姿を見て、謎が解けた。
その日の夜。
プルル…プルル…ガチャッ
『どうしたの?』
「かずくん。…愛してたよ」
『えっ』
ガチャ。
これからは、どうしようかな…
昼間に見た光景を思い出しながらそうおもった。
私の頬に一筋の涙がこぼれ落ち、私の気持ちとは裏腹にとても綺麗に輝いていた。
あぁ…今回もまた、あなたは行ってしまうのね。
分かってる。『行かないで』って言ってもどうしようもないこと。でも、それでも…
「行かないで」
「ねぇ!たすけて!ねぇ!誰もいないの!?たすけてえ!」
はぁ、、はぁ、、はぁ、、
もう誰にも…私の声は届かないのかな…
暗い部屋に閉じ込められてもう何日たったか分からない…
いつまでここにいないといけないのだろう。
私は、ここを出なければいけない理由がある。
だから、声が枯れるまで。いや、声が枯れても
ここから出ないといけない。
『声が枯れるまで』