ハーデンベルギア

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愛言葉

「愛してるよ」
『俺も…愛してるよ』
電話の声は、少し恥ずかしそう。
でも、ちゃんと【愛してる】って言って貰えて嬉しい。ちゃんと毎回愛してるよって言うと返してくれる彼。いつしか、それが合言葉のようになっていた。ある日、彼から電話がかかってきた。
『もしもし』
「もしもし?どうしたのかずくん?」
『さっそくなんだけどさ、お金…貸してくれないかな?』
「え?お金?いいけど…どれくらい?」
『ざっと20万。』
「何に使うの?」
『ちょっと事故起こしちゃってさ…』
「ええ?!大丈夫?!」
『俺は大丈夫。で、修理費とかでいるんだけど今そんなに持ってないんだよね…』
幸い、貯金してたお金があるから20万円は出せるけど事故…?
「わかった。その前にかずくん。」
『何?』
「愛してるよ。」
『…うん、俺も。』
この時から、違和感はあったのだ。彼が【愛してる】を言わなかったこと。車もバイクも乗ってないのに事故を起こしたということ。
そして、この電話から3日後、街中で腕を組んで歩いている親友と彼の姿を見て、謎が解けた。
その日の夜。
プルル…プルル…ガチャッ
『どうしたの?』
「かずくん。…愛してたよ」
『えっ』
ガチャ。
これからは、どうしようかな…
昼間に見た光景を思い出しながらそうおもった。
私の頬に一筋の涙がこぼれ落ち、私の気持ちとは裏腹にとても綺麗に輝いていた。

10/26/2023, 1:37:29 PM