「届いて...」
短冊に願いをのせて
空に輝く星々よりも、はるか遠くに行ってしまった
あなたのもとに、私の願いは届くのでしょうか。
ふと目に入ったカレンダーを見ると、今日が7月7日であることに気がついた。
社会にでてからというもの、忙しさに追われ
瞬きするようなスピードで日々が過ぎている気がする。
その日の日付も意識することが減っていた。
もう七夕か…とひとりごちる。
そういえば令和7年で、トリプル7だと世間ではプチ賑わいをみせていたな、とぼんやり考える。
それと共にあの日々の記憶も思い出した。
毎年、律儀に笹を調達してきては、色んな七夕飾りに短冊を吊るしていたあの人の姿を。
「七夕飾りにはそれぞれ意味があるって、知ってる?」
「毎年それ聞いてるから、流石にもう覚えたよ...
ほんとに好きだね、七夕....」
「好きというか、織姫と彦星の幸せにあやかりたい〜っ
て感じ?一緒に短冊に願い事書こうよ。」
「う〜ん、この歳になったら願い事って、案外難しいんだよ。」
「そうかな?色んな願いこと私はどんどん湧いてくるよ。」
ニコニコしながら、短冊に願いを書く君のつむじを眺めるのが、好きだったことを思い出す。
歳を重ねても、色んな行事ごとに取り組む心意気が
あの人の素晴らしいところだと、密かに思っていた。
毎年一緒に過ごしていた七夕も、今年はひとり。
七夕飾りで華やかだった部屋も、今は味気ない。
無性に寂しくなり、引き出しを開けてみる。
「〜確かこの辺に、あったような...」
行事事が好きだったあの人は、カンカンに色んな装飾品をまとめていたことを思い出しながら、捜索する。
おせんべいが入っていたであろう、大きなアルミ缶の中に、色とりどりの七夕飾りが詰まっていた。
毎年飾るから、捨てるのは勿体ないと仕舞っていたのだ。
少しでもあの華やかさで部屋を飾りたい、という気持ちと寂しさを紛らわしたいという思いでいくつか取り出した。
笹がないのに、どうしよう、なんで思いながら全く似つかないカーテンに括り付ける。
かなり不格好で、七夕らしくはないけれど、あの殺風景の部屋よりかはマシだった。
「そうそう、願い事も、書かなくっちゃ。」
短冊と向き合う。
あの時は変に冷めていて、願い事なんて....と思っていたが
今はひとつ、どうしても叶えたい、願い事がある。
絶対に叶わないと、わかっていても、願わずにはいられなかった。
もう私には、生涯この願いを祈る他ないのだ。
と思いながらペンを短冊に走らせる。
どうかこの願いが、はるか遠くのあなたに届きますように...
今日は快晴で、天の川では無事に織姫と彦星は再会しているだろう。
「私たちも、年に1回だけでも、会えたらいいのにね。」
「あの日の景色」
「空恋」
空に恋する、春夏秋冬。
春の空、水色の絵の具をさらに薄めたような淡い色は
薄い雲との境界線が曖昧で。
眺めているこちらも、一緒に溶けていきそうな
この美しい空の一部になりたいと思うほど。
温かい日差しと、まだ少し冷たい風と共に、淡い桜が空に舞う光景は、美しい淡い春の空。
夏の空、広く広がる真っ青な空と、真っ白な雲。
季節の中で、1番空が広く見える夏。
強い日差しが視界を狭めても、青い空だけはくっきりと、この目に映る。
青い空のキャンバスの前では、白い雲も、黄色の向日葵も、草木がより一層鮮やかにうつる。
全てを鮮やかに、美しくみせる、夏の空。
秋の空、日没の空は緋色が薄く伸ばされ、グラデーションをつくる。時計と夕日が、秋の始まりを実感させる。
朱色、緋色、紫といった様々な色が混じりあう。
その前に映る、風に靡くススキは、そんな色達を混ぜるパレットの上の筆の様。
美しく感じる色を自然が作っている。
夏の余韻が残る生暖かい風と共に、ススキのすれる音がこの身に溶け込むように、浸透する。
五感と共に、すべての美しいものが溶け込む秋の空。
冬の空、青には遠く、白いような灰色の空。
朝と夜を溶け込ました不思議な色をしている。
四季の中で、一番色を感じさせない空ではあるが
その分、何よりも太陽の日差しを反映し
この世界を美しく照らしている。
どんなに風や空気が冷たくても、空から降り注ぐ光は、平等に寄り添い、温かさを思い出させる。
光の温かさと儚さが混じりあった、美しい冬の空。
「遠くへ行きたい」
「クリスタル」