お題「喪失感」
ヒューッと風が吹き抜ける。
何か辛いわけじゃない、苦しいわけでもない。
ただ静かに秒針が動いて、
毎秒、風が吹き抜ける感覚がする。
布団やぬいぐるみにしがみついても、
その感覚は消えない。
身を守る動物のように、グーッと体を丸めて
風が止むのをただ待つんだ。
この苦しみがなんなのか、まったくわからないまま。
お題「今日の心模様」
今日は特に何も動くことなく、半日以上を寝てしまっていたらしい。
夕方、わんこのご飯を作っていると、
色々お世話になった方から着信が。
途端に緊張したけれど、
なんとかお礼を言わなければと、手を震わせながら、お礼や嬉しかったことなどを伝えた。
電話の向こう、
相槌を打ってくれたり、話を聞いて笑ってくれる
その声に、緊張しながら
やっぱり、安心した自分もいた。
「ありがとう」
そう言ってくれたとき、
しどろもどろになった私の心には
「こちらこそ」と本当は返したい
「ずっと助けてくれてありがとう」と言いたい。
そんな気持ちが支配していた。
どんなに頑張っても、
それを口から出すことはできなかったが
「また次も来たときはよろしくお願いします」
といえば、よろしくね、と穏やかに返してくれた。
体はやっぱり言うことを聞かなかったけど、
次は面と向かって、言えますように。
ありがとうございました。
お題「世界に一つだけ」
何度生きることに疲れたか、諦めようとしたか
もうわからないほど何度だって考えてきた。
生まれてきたことを後悔し、
自分を嫌う父親と、
時折愛してくれているのかわからない母親を
嫌いだと思うこともあった。
何より嫌いなのは、自分自身だ。
けれど、それでも私は
この人生を嫌いだとは思っていない。
産まれてからずっと嫌われていた事実も
一人で孤独に耐えていた過去も
すべてが重なって今がある。
そしてそんな今、私の周りには
「大丈夫だよ」と安心させてくれる人も
なんでもないことで大爆笑ができる人もいて
「死にたい」と弱音をこぼしあえる人もいる。
素敵だと思える出逢いがたくさんある。
そんな、たった一つの、たった一度きりの
この人生は大好きだ。
お題「胸の鼓動」
ぬいぐるみをぎゅっと抱きしめると、
まるでそのぬいぐるみが生きているかのように
自分の鼓動が返ってくる。
顔を埋めてスゥッと息を吸うと、
優しい匂いが鼻に届く。
深呼吸をして、深く深く入る。
ドクン、ドクン。
もやもやした何かの奥に、深く深く。
「こわくない、大丈夫」
ふわふわの優しいぬいぐるみを強く抱きしめて、
今の自分が安心できる居場所を探す。
独りでも、怖くない世界へ。
お題「踊るように」
「この世ははじめから地獄だ」と、
私が好きなアーティストは言った。
「地獄でなぜ悪い」という曲まである。
辛いことがあったと自覚もなかったある日、
テレビの中でその曲を歌うその人の声を聞いて、
なぜだか涙がにじみそうになった。
その場にいるスタッフさんの楽しそうに踊る姿を見て
泣きそうなのに、幸せで、立ち上がれはしないけれど
まるで踊るように
私は、目の中の涙も一緒に体を揺らした。