題 言葉にできない
言葉にできない。
一緒にいたいのに、一緒にいるとずっと言葉が出ない。
意識しはじめてからずっと・・・。
「美紗」
私は横にいた那智に声をかけられる。
那智は私の親友だ。横にいてくれると心強い。
で、その横から春斗が顔を覗かせる。
「ボーッとしてたみたいだけど、大丈夫?」
と那智。
「う、うん・・・」
私は頷いて返事をする。
春斗が那智の隣で、
「最近元気ないけど大丈夫か?」
と話しかけてくる。
「あ・・・うん。平気」
私が上ずった声で返事をすると、那智が隣で軽くため息をついた。
那智は、私が春斗のこと好きって気づいたことを知ってる。
むしろ自分で好きって気づく前から、那智には私の気持ち見抜かれてた。
私は、恋愛感情に気づいてから、それまでは春斗にべったりだったのに、急に恥ずかしくなってしまった。
どう接していのか分からない。
だから、こうしていつも那智を挟んで三人で歩く。
春斗には何度もどうしたの?って聞かれるけど、理由は言えないでいた・・・。
「あ、いけない、私学級委員の仕事で先生に呼ばれてたんだった!」
那智が突然声を上げる。
昼休憩後の時間だから、それはありうるかも。
でも、何で今のタイミングで言うの?!
私の抗議の目線に、ちゃんと話しな!って囁いて去っていく那智。
私は春斗と2人で取り残される。
「じゃ、行こうか?」
春斗に言われて、私は無言で頷いた。
と思うと、いきなり春斗に手を取られて、近くのベンチに連れて行かれる。
手を握られたことにドキドキしていると、春斗は、座ってと言った。
もしかして怒ってる?いつもと声色が違う。
「最近どうしたの?僕、美紗に何かした?」
ち、近い、近い・・・。
顔をのぞき込まれて、思わず顔を背ける。
まずいっと思ったけど、どうしようもなかった。
「僕のこと・・・嫌いになった?」
悲しそうな声。思わず振り返ると、春斗は、私をジッとみていた。
とても悲しげな顔で。
私はすぐに返事をする。
「違う、嫌いになんてなってない!」
その瞬間、春斗に見られてるとかどうでも良かった。春斗にこんな顔させちゃうなんて。凄く辛い気持ちだ。
「じゃあ怒ってるの?」
「怒ってないよ」
春斗の質問に、私は何て言ったらいいのかを考えながら答えていた。
「僕、美紗と話すの楽しかったから、いきなり態度が変わってちょっと辛いな」
春斗のしゅんとした表情に、私は気づくと言葉に出していた。
「違うのっ、私も春斗と話すの好きで、好きになりすぎちゃって、どうしていいか分からなくて・・・」
「え、それって僕のことを好きになってくれたって事?」
私はほぼ告白みたいな自分の言葉に気づいて動揺する。
「あ、友達ね!友達としてね!!」
苦しい言い訳。
「そっか・・・僕は友達としてじゃない方が嬉しい」
「え・・・」
ドクンッ
春斗と視線が合わさった瞬間心臓が大きく跳ねた。
そして、その時春斗と私は同じ気持ちだって、私は理解したんだ。
「わ、私も、春斗が好き。ごめん、好きだから、どうしていいか分からなかったから、態度おかしかったの」
「そっか、そういう理由なら嬉しいよ」
春斗が私の手を握る。
私と春斗は視線を合わせて微笑む。
どうしてかさっきまでの春斗へのきまづい気持ちも全てなくなって、幸せな気持ちだけに満たされている自分の心に気づいた。
題 春爛漫
素敵な陽気。
桜の花があちこちで満開の今日。
私は彼氏とデートに出かける約束をしている。
嬉しくて早めに来ていた私よりも、彼氏の方が早く待ち合わせ場所に到着している。
「おはようっ、びっくりした。私より早いね!」
私の顔を見て、彼氏が微笑む。
「おはよう。早く綾に会いたくて、早起きしちゃったよ」
その言葉に心の中からジ~ンと暖かくわきあがってくるものを感じる。
好き、大好き。
この春のふんわり暖かい陽気も相まって余計に気持ちが有頂天に高まっていくのを感じる。
彼氏と腕を組んで歩いていると、街路樹に植えてある満開の桜の木からハラハラと美しく桜の花びらが降り注ぐ。
風が吹くと花びらがさらに乱舞し、その光景は美しく、思わず止まって見とれてしまう。
「春っていいね・・・」
私は呆然と美しい桜吹雪を見ながら呟くと、彼氏がクスッと笑う。
「あ、どうして笑ったの?」
私が尋ねると、彼氏は、
「だって、綾、春も夏も秋も同じこと言ってたから」
「えっ、そうだっけ?」
・・・でも言ってたかも。四季それぞれにその季節の良さがあるんだから仕方ないよ。
それに・・・。
私は隣をチラッと見る。
「あなたがいるから、どの四季も素敵に見えるんだよ」
私は心からの本心を打ち明けると、弾んだ気持ちで彼氏に笑いかけたんだ。
題 誰よりも、ずっと
ねえ
誰よりもずっと私があなたのこと好きだよね?
私はいつもあなたを見てる。
あなたの微笑みは本当に天使のようで。
周りの女の子たちもほぅと感嘆を上げてあなたを見ている。
美しい彫刻のようだ。
でも、一番あなたのことを見ているのは、きっと私。
あなたを思うと、心が焦げてくるように熱くなる。
でもあなたは人気者だから、周りにはいつも人ばかり。
だから仕方ないよね?
私があなたの後をつけたとしても。
あなたのこと知りたくて、あなたを焼き付けたくてカメラで撮影したとしても
私はあなたがただ好きなだけ。
昨日、あなたの彼女って子から、付きまとうのやめてって言われた。
ウソつき。
ウソつき。
ウソつき。
そんな訳ないじゃない。
安心して。
もうあの子はあなたの眼の前に現れたりしないから。
もう、安心だよ。あなたの彼女を名乗るウソつきはいないから。
私だけがあなたをずっと見ているからね。
題 これからもずっと
これからもずっと一緒だよね
「あ、うん、そうだね・・・」
ファーストフードで私は彼氏にそう言うと、彼氏は微妙に視線を反らしてそう言った。
・・・あやしい。
「ねえ?私のどこが好き?」
「え?今更そんなんいいじゃん」
付き合って1年半。高校に入って付き合い出した彼氏。
今までも冷たくなったと思っていたけど、さっきの曖昧な回答と視線を反らしたことで、私は何となく予感がした。
他に好きな人がいるんじゃないかって。
私も、1年同じように彼氏を好きだった訳じゃない。好きだったり、気持ちが彼氏じゃなく部活にむいたり、なんとなく倦怠期みたいなのも感じていたから。
でも、ちゃんと彼女と別れてないのに他の人と付き合ってたりしたら許せない。
順番違うでしょって思う。
彼氏が私に視線を向けることもなく携帯を注視してる。
と思うと・・・。
「あ、用事できたわ、またな」
そう言ってお金も払わず店を出ていく。
私は無言で会計を済ませると、彼氏の後をつけた。
しばらく歩くと、彼氏は誰かに手を振っている。
「はあっ?!」
私はその現場を見て思わず声を上げてしまった。
相手とハグし合ってる彼氏はギョッとした顔でこちらを振り向く。
「なっ!?お前、なんでここに?」
「いや、あんたが最近怪しいから浮気してるかと思って・・・そうだったの?」
「ごめん、そうなんだ・・・」
「はぁ・・・」
なんとも言えない気持ちで私は彼氏とその恋人を見つめる。
「それじゃ、仕方ないね、別れよう」
「ごめん、言い出せなくて・・・」
言い出せない気持ちはわかる。
だって、相手は・・・男性だったから。
そうなってくると、私もあまり踏み込んだ事言えないや。
私は複雑な気持ちでその場を去った。
元彼氏の新たな一面を見てしまい、怒りが動揺に全振りしてしまっている。
・・・新しい彼氏みつけよっと!
とりあえず、私はそう思った。
題 沈む夕日
今日も沈んでいく
丸い大きな優しい光
ここで見ているとどこか物悲しくて・・・
でも、その物悲しさがまたいいなと感じる
私は今日も砂浜に座って夕日を見てる
静かに空の色が変わっていく
オレンジに、淡い紫に、水色に藍色に青に黄色が混ざってあらゆる色が空に広がっていく
まるで絵の具のパレットみたいに広がっていく色に見とれる
暖かい気候になって、風がほんのり頬を撫でる
こんなに素敵な光景は何度でも見に来てしまう
毎回唯一無二の色遣い
他に同じ彩り、景色を見ることは出来ないから
私は自然のキャンバスが見たくて、きっと明日もここで沈む夕日を見ているだろう