題 ハッピーエンド
両想いはハッピーエンドって言われることがあるけど、例えば、私は半年前彼氏と付き合ったけど、今日、他に好きな人が出来たって言われた。
本当にハッピーだけでエンドになることなんてないんじゃないかと思う。
あんなに好きだって言ってくれて、私も大好きって伝え続けたのに。
彼はだんだん連絡もそっけなくなって、一緒に帰るのも用事があるからって避けるようになった。
付き合う前より疎遠になってしまっていた関係。
だから、ある程度、話があるって言われた時は分かってた。
でも・・・でも。
でも、私はずっと好きだった。
私から告白して、付き合えてからも本当に幸せだった。
距離を置かれても、付き合っているっていう事実だけで嬉しかったくらいなのに・・・。
別れはあっけない。昨日までは彼氏だったはずなのに、今日からはただのクラスメートだ。
ハッピーエンドは遥か彼方に感じる。
私のこの苦しみはいつほどけていくのかな。
辛くてどうしようもない感情はいつ癒やされるんだろう。
彼の顔を見ると、怒りと切なさと悲しみと、色んな感情が沸き上がる。
だからといって何も出来ない。
今できるのはただ家に帰って泣くだけだ。
じっと気が遠くなる時間、彼を忘れることを待っていることだけが私にできることなんだろう。
私は顔を覆う
涙が零れないように足早にカバンを取ると、教室から駆け足で家へと走り出した。
帰宅中、誰にも泣き顔を見られないように。
題 見つめられると
見つめられると、金縛りに合う。
いつもいつも、あなたに見つめられると。
あなたはそんな私を見て、いつもクスッと笑う。
「どうしたの?」
イタズラっぽい笑顔で。
分かってるくせに。
私があなたに見つめられると固まってしまうこと。
赤面して上手く話せなくなること。
でも素知らぬフリで顔を近づけて、手を握るから、私の上気した頰はますます色を深める。
「や、やだ・・・」
思わず拒否の言葉が口から出る。
「やなの?」
ずるいのよあなたは。
本当に嫌な訳ない。
私が困り果ててまた固まると、あなたはまたクスッと笑って、私に優しくキスをすると、
「本当に可愛いね」
って、悪魔のような囁きをするんだ。
あなたのせいで私の心臓は毎日破壊寸前だ。
題 My Heart
私はずっとずっと恋なんてしないと思ってた。
だって、誰にも心を動かされない。
好きな人?そんな話になっても、私は分からないから、いないって答えてたし。
私の心臓には欠陥があるんじゃないかと思った程だ。
情緒がない、感覚が鈍い、とか・・・。
友人にはたまに言われる。何を考えてるのか分からない、と。
怒っているのか、悲しんでるのか、喜んでるのか見えないって。
そうだよね。だって私も自分の感情が分からないから。
そう言われても仕方ないと思ってた。
でも、その図書館であなたに会ったんだ。
優しい微笑み。
向かいに座った時に目があって、視線を外せなくなった私に、イギリスとのハーフだと話したあなた。
金髪がきれいで、瞳が淡い緑で、日本語が凄くうまくて。
あなたの雰囲気が好きだと思った。
上手く説明できないけど、一目見て、この人がいいって感じてしまったの。
他のどんな芸能人にも何も感じたことないのに、その人にだけ、私の心が動いているのを強く実感したんだ。
会いたくて、図書館に通い詰めた。
私の行動と衝動を私自身が理解できてなかった。
でも、幸運なことに、本当に奇跡的に、あなたは、私を好きになってくれた。
私の告白を受け入れてくれた。
その瞬間、もう、他には何もいらないと思った。
そんな強い想いと共に、あなたを愛してる、と強く実感した。
「大好きだよ、愛してるよ」
何回伝えても足りない。
しかもあなたは微笑んで僕もだよって言ってくれる。
その言葉に、天にも昇る気持ち。
私の世界は変わった。
あなたが現れてから私の中心はあなたになってしまった。
あなたにしか特別な鼓動を早めない心。
どうして私は感情を感じないのかって、鈍いのかってずっと思ってた。
でも、あなたにあってはっきり分かったよ。
私はあなたに会うために、あなたに会って本当の愛を知るためにいままで気持ちが動かなかったんだって。
私は今日もあなたと図書館で待ち合わせをする。
あなたに会うと確かに高鳴る私の心臓が、あなただけが大切だということを私に教えてくれるんだ。
題 ないものねだり
「私、美緒みたいだったら良かったな」
私は頭が良くて、いつもしっかりしている友達を見て、ふとポツリと言った。
「え?そうなの?」
美緒は意外そうな顔で私の顔を見る。
「可奈子は可愛いじゃない、私は可愛く生まれたかったけど」
「可愛くても、いい大学いけるわけじゃないもん。私、大学行って、資格取って働きたいんだから。でも、全然勉強しても頭に入らないよ」
私の呟きを聞いて、可奈子が不思議そうに問いかけてくる。
「芸能界とか目指したら可奈子なら人気になるんじゃない?それに、可愛いとみんな優しいでしょ?いいことばかりに見えるんだけどな」
美緒の言葉に、私は激しく首を振った。
「私は目立ちたくないの!それに、ちゃんと自分の頭で
勉強して、学力で就職したいの。みんな優しいっていうけど、私は美緒はみんなに尊敬されていいなぁ、と思ってるんだからね!」
美緒は私の言葉に考え込むように顎に手を当てた。
「うーん、尊敬ね。そうね、勉強で困ったことにはならないけど、期待されるのも結構プレッシャーなんだよ」
「そうなの?」
私は、美緒がプレッシャーに感じてるなんて、全然見えなくて、びっくりして、聞き返す。
「うん。ちょっと点数が下がると、親や教師にいろいろ言われるし、将来は安泰だ、って好き勝手に未来のこと言われるし。将来なんて分からないのにね」
そっか、頭が良くなるとそれが当然だから、頑張って維持しなきゃいけないんだ・・・。
確かに、美緒は大変そうだ。
私はないものねだりをしていたのかな?
「美緒も大変なんだね、知らなかった。私は私なりに努力するしかないね。美緒みたいにはなれなくても、頑張って学力あげてみるよ」
私の言葉に美緒は微笑む。
「可奈子のそういうとこ、私好きだな。今日勉強会する?」
美緒の言葉に私も笑顔になる。
「いいの?やった!やるやる。よーし頑張るぞ!」
私の出来ることには限りがあるのかもしれない。
それでも、ないものねだりかもしれないけど、少しずつでも、美緒に近づければ嬉しいな。
そうして、いつか、自分に出来ることが増えたら、もう少しだけ自分を好きになれる気がするから。
題 好きじゃないのに
席替えの日、私は自分のくじで指定された席に着くと隣を見てため息をついた。
隣のたくまくんも私を見て同時にため息をつく。
2人の声が重なる。
「また隣の席か」
たくまくん自体に罪はない。話してて楽しいし、別に隣でもいいんだけど・・・。
「おー不正してんじゃねえよ!ラブラブだからって」
「また2人隣なの?そう言えばクラスもずっと一緒らしいよ?」
「え?やばくない?」
そんな声があちこちから聞こえてくる。
「あー、やだっ!」
私がそう言って耳を塞ぐと、たくまくんも顔をしかめて頷いた。
「最悪だよな」
なぜか私とたくまくんは同じクラス、隣の席になることが多い。
さっきも言ったけど、たくまくん自体はいい人だ。
でも・・・私もたくまくんも好きな人がそれぞれいる。
それなのに、完全にクラスでカップル扱いで・・・。
たくまくんの好きな人は違うクラスだからまだいいけど、私はからかわれてる姿を好きな人に見られている。
「神様ってひどいよね?お互いなんもないんだからわざわざ一緒にしてくれなくていいのに」
私が涙目でたくまくんを見上げると、たくまくんは頷いた。
「そうだよな、俺達、本当になんなんだろうな?意味がわからない」
そんな風に愚痴ったのは何回目だろうか。
そんな風にただ話してても、イチャイチャするなよーとガヤが飛ぶ。
チラッと好きな人を見る。いつも、私が軽口叩かれても興味なさそうにして、私のことからかったことない人。
静かな雰囲気の人だけど、優しい人だ。
友達を助けたり、勉強教えたりしてるのをよく見る。
今も、軽口に気を取られず何かノートに書いている。
軽口を叩かないでいてくれてホッとした。
やっぱり、好きだなぁと思う。毎日毎日見る度に好きになっている。
「好きな人が同じクラスっていいよな」
たくまくんが私の視線を追って小さな声で言う。
「まーね、でも、からかわれてるの見られてるから、そうでもないよ。好きな人見られるのは凄い嬉しいけど!」
「そっか・・・俺はほぼ会えないから、会えるのはうらやましいな・・・」
たくまくんの好きな人は先輩だ。部活などが被ってはないから会えた日はラッキーらしい。
「見ろよ、また2人、こそこそ内緒話してるぞ、本当熱いよなー!」
「もー違うって言ってるでしょ!?」
「お前らいい加減にしろっての!違うから」
私とたくまくんの声が重なる。
一緒に、発言したことでまた息ぴったり、と歓声が起こる。
私は疲れ切ってはぁ~と机に突っ伏した。
好きじゃないのに、でもこの変なシンクロで全然信じてもらえないよ・・・。
私は何にすがっていいかわからず、天を゙見上げて祈る。
どうか、このたくまくんとのシンクロを解除して、わたしの好きな人と仲良くさせてください!
空からの返答は当然ない。
私は解決法のないこの悩みに、もう一度ため息をついた。