題 ないものねだり
「私、美緒みたいだったら良かったな」
私は頭が良くて、いつもしっかりしている友達を見て、ふとポツリと言った。
「え?そうなの?」
美緒は意外そうな顔で私の顔を見る。
「可奈子は可愛いじゃない、私は可愛く生まれたかったけど」
「可愛くても、いい大学いけるわけじゃないもん。私、大学行って、資格取って働きたいんだから。でも、全然勉強しても頭に入らないよ」
私の呟きを聞いて、可奈子が不思議そうに問いかけてくる。
「芸能界とか目指したら可奈子なら人気になるんじゃない?それに、可愛いとみんな優しいでしょ?いいことばかりに見えるんだけどな」
美緒の言葉に、私は激しく首を振った。
「私は目立ちたくないの!それに、ちゃんと自分の頭で
勉強して、学力で就職したいの。みんな優しいっていうけど、私は美緒はみんなに尊敬されていいなぁ、と思ってるんだからね!」
美緒は私の言葉に考え込むように顎に手を当てた。
「うーん、尊敬ね。そうね、勉強で困ったことにはならないけど、期待されるのも結構プレッシャーなんだよ」
「そうなの?」
私は、美緒がプレッシャーに感じてるなんて、全然見えなくて、びっくりして、聞き返す。
「うん。ちょっと点数が下がると、親や教師にいろいろ言われるし、将来は安泰だ、って好き勝手に未来のこと言われるし。将来なんて分からないのにね」
そっか、頭が良くなるとそれが当然だから、頑張って維持しなきゃいけないんだ・・・。
確かに、美緒は大変そうだ。
私はないものねだりをしていたのかな?
「美緒も大変なんだね、知らなかった。私は私なりに努力するしかないね。美緒みたいにはなれなくても、頑張って学力あげてみるよ」
私の言葉に美緒は微笑む。
「可奈子のそういうとこ、私好きだな。今日勉強会する?」
美緒の言葉に私も笑顔になる。
「いいの?やった!やるやる。よーし頑張るぞ!」
私の出来ることには限りがあるのかもしれない。
それでも、ないものねだりかもしれないけど、少しずつでも、美緒に近づければ嬉しいな。
そうして、いつか、自分に出来ることが増えたら、もう少しだけ自分を好きになれる気がするから。
3/26/2024, 5:04:14 PM