題 怖がり
怖いよ・・・
私は何もかもが怖い。
自分の部屋も怖いし、トイレもキッチンももちろん怖い。
どうしてかな?怖いのに理由があれば納得できるんだけど。
母親がいるリビング以外にいることが怖くて。
リビングから動けない。
トイレもギリギリまで我慢してしまうし、母親に、付いてきてってトイレの前まで付いてきてもらったこともある。
何で自分の家なのに怖いの?と母親からは不思議がられたけど・・・
分からない。分からないのもまた怖いな、と思う。
私には姉がいる。
姉は小さい頃から変わった子だった。
「何か家に足だけ動いてるのが見える」
とか、壁をじーっとみて、あそこに何かいるね、とか、独り言を話していると思いきや、頭の中の声と話してるとか。
頭の中の小さい女の子が遊ぼうとあまりにもうるさいから相手をしていたらしい。
その事を友達に話すと、確実にお姉ちゃんのせいじゃん!
と言われた。
そうなのかな?
姉はそんな発言をするけど、私はそこまで怖いと思ったことがなかったんだけど、実は潜在意識では怖がっていたのかな?
もしかして、この家に何かがいて私がそれを無意識に感じ取っているってこともあるかもしれない。
それを自衛本能で怖がっているだけなのかも。
姉が聞いている声は実は悪霊のもので・・・。
自分で想像して、自分で怖くなってしまった。
これは自業自得だね。
ともあれ、姉が原因だろうとそうでなかろうと一つだけはっきりしていることは、どちらにしても、私はリビング以外のあらゆる場所が怖いっていうことだ。
大きくなったら野菜嫌いを克服出来るように、この怖がりも克服したいな。
ホラー映画見れるレベルとまではいかなくても、暗い中外に出られるくらいまでにはなりたい。
私は怖がりだ。
でも、未来に希望をもってはいる。
星が溢れる
星、星、星
満天の星空を見上げて私は両手を広げてくるくる回る。
「ねえっ!キレイだね」
「こんな状況じゃなければな」
幼馴染はブスッとした顔で返事をする。
「ノリ悪いなぁ。大丈夫、何とかなるって!」
「お前につきあわされてなんとなかったためしはないんだって!」
幼馴染の健太の声を無視して、私は小高い丘の木の下に座る。家がよく見える。
お母さんと勉強のことでこっぴどく喧嘩したんだ。
家の明かりもよく見えた。
今頃、心配しているだろうか?書き置きを残して出てきたから。
「はぁ~。何で俺まで」
健太はため息をついて私の横に座る。
「いいじゃん。女一人だと危ないでしょ、ボディーガードよ!」
私の返答にも不満そうな顔をする健太。
「あのなー、前々から台風の日に冒険行くだの、大雪の日に一番深く積もった場所を見に行くだの、散々付き合わされてるんだけど、俺」
「幼馴染でしょ?」
ニコッと私が笑いかけると、健太は再びため息をつく。
「幼馴染って便利屋か?」
「まあまあ、そう言わず。見てよ、星空がキレイだよ」
私が再び夜空を見るよう促すと、健太はしぶしぶ上を見た。
「・・・本当だ、キレイだな」
漆黒の闇に、チカチカと瞬く星星は私達の心を柔らかくしてくれるようか気がしていた。
月も三日月より細い分、星の明るさが際立っていた。
「この星空を見られたなら家出したかいあったでしょ?」
「・・・なぁ、家出はもうやめて帰ろうぜ」
健太が私を見て言う。
「やだ、だって私の親宿題しないと遊んじゃだめっていうんだから」
「それはお前が宿題毎日やらなくて担任から連絡行ったからだろう」
「遊んでる方が楽しいもん。宿題なんてやりたくないよ」
「子供じゃないんだからさ。家出して解決する問題じゃないと思うんだよな・・・」
健太がそう呆れたように言うので、私はムッとする。
「じゃあ、どうすればいいの?」
「時間決めてやったら?」
「分からないんだもん」
勉強をすればするほどこんがらがる。分からなくなる。漢字をずっと書いてると頭がおかしくなりそうだ。
「分からないところは、俺も教えるからさ。一緒に宿題しようよ」
健太は、そう言ってくれる。
「いいヤツだね、健太。でも、私に出来るかな?」
自信がなくてそう言うと、健太は力強く頷いた。
「大丈夫、できるよ。出来なかったらまた考えればいいから、な?帰ろう」
「・・・分かった」
正直、帰ってまたお母さんとやり合うのは嫌だった。
口ではとても勝てない。
私の気持ちを察したのか、健太が話し出す。
「ちゃんとお前の母親にも言うから。一緒に勉強するって。だから今度から家出に俺を付き合わせるなよ」
健太にそう言われて、私は胸が軽くなるのを感じる。
「ありがとっ、健太。もう家出なんてしないようにするよ、まぁ、大雪の日なら雪だるま何個作れるかチャレンジしに行くけどね〜!」
「それそれ、そういうのが嫌なんだって」
そんなことをワイワイ話しながら、私の短い家出時間は終わったのだった。
題 安らかな瞳
君を初めて見た時、高校の中庭の芝生に寝転んで目を閉じて寝ていたね。
僕は入学したてで、何も知らなくて、中庭で迷っていたから。
チャイムがなって、みんなが自分の校舎へと戻る中どうしていいかわからず立ちすくんでいた。
君の頬や髪にヒラヒラと桜の花びらが舞うのがキレイで、寝顔が安らかで・・・。
何だか、本当に意識を失っているか死んでしまっているんじゃないかとふと思ったんだ。
だって桜の木の下には何とかが埋まっているとか聞くから・・・。
「君、大丈夫?生きてる?」
おずおずと呼びかけると、彼女のまぶたが動いた。
「うーん、今何時?」
君は目を開けて僕に尋ねた。
「1時過ぎだと思うけど。さっきチャイム鳴ったから」
僕が周りに時計が無いため、勘で話すと、君は小さく欠伸をした。
「あ、そう。どしたの?君も寝過ごした?」
呑気に起き上がると、ふわふわしたウェーブヘアの髪を整える女の子。
起き上がった拍子に、顔や髪についてた桜の花びらも落ちていった。
「寝過ごしてはないけど、迷っちゃって・・・」
僕が情けなくもそう言うと、その子はクスッと笑った。
「迷子かぁ。この学校広いからね。仕方ない、連れてってあげるよ。何年何組?」
「1年C組」
僕が言うと、先輩は、立ち上がって歩き出す。
「じゃあこっちだ。私は3年A組、よろしくね、もう会うことはないかもしれないけどね」
そうしてクスッとまた笑う。その姿がまるで天使のように見えて、僕はドキッとした。それに・・・。
「3年だったんですね!タメ語ですみませんっ」
失礼だけど、背が小さいから1年生だと思っていた。
「いいよ、気にしないで。別にタメ語でもなんでも」
そう気さくに笑うと、先輩は、僕をちゃんとクラスまで送り届けてくれたんだ。
そして半年後・・・。
「先輩ってば!もう起きてくださいよっ」
相変わらず同じ場所で寝過ごす先輩を見つけてしまう僕。
すっかりアラーム代わりの役目をさせられている。
「う〜ん、もうそんな時間?」
先輩はいつも眠そうに目をこすりながら、覚醒までの時間はボーッとしている。
「もうそんな時間です。早く教室に行きましょう」
もう会わないかもと言っていた言葉はどこへやら。
僕は先輩がいつも寝過ごしてしまうのを見過ごせず、毎日のように一緒に教室に戻ってる。
「いやーでも徹くんがいるから助かってるよ〜」
先輩がそう言ってくれると、僕はドキッとする。
先輩の為になるのなら、感謝されるのなら、アラーム役でも別に構わないと思っている自分もいる。
「あっ、もう遅刻になりますっ」
校舎に入って時計を確認した僕は、先輩の手を掴む。
「行きますよ、早く!」
「あっ、待ってよ!」
こんな役得もある。僕は少しの嬉しさと大いに焦りを感じながら教室へと先輩と一緒に駆け出していた。
題 ずっと隣で
隣にいたい
あなたの隣にいられればそれだけで他には何も望まない。
「ん?」
隣で歩いている私の彼氏がこちらを見て微笑む。
私も微笑み返して、彼氏の手を握った。
握り返してくれる手が暖かい。
こんな風に一緒にいられることは、どれだけの奇跡が重なって出来たものなんだろう。
私が好きだからといって、相手も私のこと好きになってくれる保証はなかった。
逆も同じ。
私達がお互いを好きでいられて、今ここを歩いていられることが、たまらなく幸せだ。
「幸せだね」
私は彼氏の手の温かさを感じながら言った。
「そうだね」
彼氏は頷くと、繋いだ手に軽く力を入れる。
「君と出会ってからの僕は毎日楽しいよ」
「私も!私も毎日楽しい!幸せ!」
だからこそ・・・
だからこそ、これからもこの関係を続けていきたい。
途切れさせたくない。
永遠がお金で買い取れるなら魂でも売るのにな、と黒い事を考えてしまう私。
それは叶わないからこれからも努力しよう。
大好きな人とずっといられるように。
あなたの横にはいつも私がいられるように。
題 もっと知りたい
あなたのこともっと知りたい
好きなのに、何も知らない。
違うクラスだから、あなたの性格も分からない。
何色が好きなのか、どんな食べ物が好みなのか、どんなタイプの女の子が好きなのか。
質問したいことは沢山あるけれど・・・。
それでも、私は話しかける勇気すらなくて。
ここでこうしてあなたの通り過ぎる姿を見ているだけ。
廊下で掲示物を見ているふりをしながら
あなたを横目で見ているだけなんだ。
もっと近づきたいから
ここで動かない重い一歩を踏み出したい。
あなたへ声をかけられるように。
そしてよりあなたを深く知るための一歩を。
踏み出したい。
「あのっ!!」
そうして、話しかけた後はもう進むだけだ。
後戻りは決してできないから。