星が溢れる
星、星、星
満天の星空を見上げて私は両手を広げてくるくる回る。
「ねえっ!キレイだね」
「こんな状況じゃなければな」
幼馴染はブスッとした顔で返事をする。
「ノリ悪いなぁ。大丈夫、何とかなるって!」
「お前につきあわされてなんとなかったためしはないんだって!」
幼馴染の健太の声を無視して、私は小高い丘の木の下に座る。家がよく見える。
お母さんと勉強のことでこっぴどく喧嘩したんだ。
家の明かりもよく見えた。
今頃、心配しているだろうか?書き置きを残して出てきたから。
「はぁ~。何で俺まで」
健太はため息をついて私の横に座る。
「いいじゃん。女一人だと危ないでしょ、ボディーガードよ!」
私の返答にも不満そうな顔をする健太。
「あのなー、前々から台風の日に冒険行くだの、大雪の日に一番深く積もった場所を見に行くだの、散々付き合わされてるんだけど、俺」
「幼馴染でしょ?」
ニコッと私が笑いかけると、健太は再びため息をつく。
「幼馴染って便利屋か?」
「まあまあ、そう言わず。見てよ、星空がキレイだよ」
私が再び夜空を見るよう促すと、健太はしぶしぶ上を見た。
「・・・本当だ、キレイだな」
漆黒の闇に、チカチカと瞬く星星は私達の心を柔らかくしてくれるようか気がしていた。
月も三日月より細い分、星の明るさが際立っていた。
「この星空を見られたなら家出したかいあったでしょ?」
「・・・なぁ、家出はもうやめて帰ろうぜ」
健太が私を見て言う。
「やだ、だって私の親宿題しないと遊んじゃだめっていうんだから」
「それはお前が宿題毎日やらなくて担任から連絡行ったからだろう」
「遊んでる方が楽しいもん。宿題なんてやりたくないよ」
「子供じゃないんだからさ。家出して解決する問題じゃないと思うんだよな・・・」
健太がそう呆れたように言うので、私はムッとする。
「じゃあ、どうすればいいの?」
「時間決めてやったら?」
「分からないんだもん」
勉強をすればするほどこんがらがる。分からなくなる。漢字をずっと書いてると頭がおかしくなりそうだ。
「分からないところは、俺も教えるからさ。一緒に宿題しようよ」
健太は、そう言ってくれる。
「いいヤツだね、健太。でも、私に出来るかな?」
自信がなくてそう言うと、健太は力強く頷いた。
「大丈夫、できるよ。出来なかったらまた考えればいいから、な?帰ろう」
「・・・分かった」
正直、帰ってまたお母さんとやり合うのは嫌だった。
口ではとても勝てない。
私の気持ちを察したのか、健太が話し出す。
「ちゃんとお前の母親にも言うから。一緒に勉強するって。だから今度から家出に俺を付き合わせるなよ」
健太にそう言われて、私は胸が軽くなるのを感じる。
「ありがとっ、健太。もう家出なんてしないようにするよ、まぁ、大雪の日なら雪だるま何個作れるかチャレンジしに行くけどね〜!」
「それそれ、そういうのが嫌なんだって」
そんなことをワイワイ話しながら、私の短い家出時間は終わったのだった。
3/16/2024, 9:37:15 AM