「パラレルワールド」
街のシンボルの鉄塔が遠く見える
尖った先に夕陽が刺さって滲んでいる
先っぽはあんな風になってるんだと改めて気付く
寝過ごして降りた駅は
まるで異世界に迷い込んだみたいだった
たった1駅のことなのに
真っ直ぐ伸びる線路
空を泳いでる赤とんぼ
高校生たちの笑い声
いつもの風景も見慣れない景色に思えて
なんだか気持ちが落ち着かない
どれぐらいで次の電車がくるんだろうか
何度も時計を確認しては
逆方向の線路を眺めてみる
踏切の音が遠くから聞こえて
ホームからアナウンスが流れる
重々しい音を鳴らしてゆっくりと電車が迫ってくる
やっと帰れるとホッとして乗り込んでドアが閉まる
車窓から見える景色を確認して見ながら
ほんとにこれで帰れるのか不安がよぎる
手のひらがじんわりとしてくるのがわかる
しかしなんてことはなく電車はいつもの駅に着く
少し足早に改札を抜けて振り返る
夕陽は遠くに傾いて鉄塔の隣にあった
流行りのマンガみたいに生まれ変わってもないし
なんの能力も身につかないままだけど
帰還した達成感に胸に自転車を漕いでいく
「報われないシンデレラ」
まるで時計の長針みたいに
僕はあなたとの数時間のために
走り回って会いにいく
だけどあなたは誰のものでもない
会いにくるみんなを癒して
次へ次へとさよならしていく人
きみにとって僕はたくさんの中の1人
そんなことはわかってる
だけどきみは僕とってただ1人の人
それに気づいた日からずっと
会うことが楽しみから苦しみに変わっていった
ほんとはいつも側にいて欲しい
ほんとは僕のものになってほしい
言いかけるけど虚しいからやめる
いくら時を重ねても
時間の無駄だとわかっていても
きみの喜ぶ顔が見れるなら
やっぱり僕はきみに会いにいく
わかっていても会いにいく
「一緒にいること」
「またね」で別れて
「おはよ」で会って
右手と左手で手を繋いで今日も始まる
横断歩道を急ぐときは僕が
エスカレーター乗るときは君が
お店に入るときは僕が
席に座るときはきみが
メニューを選ぶときは僕が
料理をシェアするときは君が
疲れたときは僕が
歩き始めるときは君が
ハグするときは僕が
キスするときは君が
なにも言わない日々だけど
いつもと同じことかもだけど
一緒にいてくれるそのことが
2人が2人でいることの意味
「くもり空」
それは太陽が閉めたカーテン
太陽だって1人になりたい時もある
「虹の架け橋」
急な雨降りに街中からため息が聞こえる
雨雲は悪くないのに少しだけ傷ついてる
虹は傷ついた雨雲を慰めるために
太陽からのちょっとしたプレゼント