「パラレルワールド」
街のシンボルの鉄塔が遠く見える
尖った先に夕陽が刺さって滲んでいる
先っぽはあんな風になってるんだと改めて気付く
寝過ごして降りた駅は
まるで異世界に迷い込んだみたいだった
たった1駅のことなのに
真っ直ぐ伸びる線路
空を泳いでる赤とんぼ
高校生たちの笑い声
いつもの風景も見慣れない景色に思えて
なんだか気持ちが落ち着かない
どれぐらいで次の電車がくるんだろうか
何度も時計を確認しては
逆方向の線路を眺めてみる
踏切の音が遠くから聞こえて
ホームからアナウンスが流れる
重々しい音を鳴らしてゆっくりと電車が迫ってくる
やっと帰れるとホッとして乗り込んでドアが閉まる
車窓から見える景色を確認して見ながら
ほんとにこれで帰れるのか不安がよぎる
手のひらがじんわりとしてくるのがわかる
しかしなんてことはなく電車はいつもの駅に着く
少し足早に改札を抜けて振り返る
夕陽は遠くに傾いて鉄塔の隣にあった
流行りのマンガみたいに生まれ変わってもないし
なんの能力も身につかないままだけど
帰還した達成感に胸に自転車を漕いでいく
9/26/2025, 8:18:24 AM