言い出せなかった言葉
言い出せなかった言葉はどこにいく
たんぽぽの綿毛に乗って空に舞う?
陽炎に揺られて虹の彼方へ?
かぐや姫と一緒に月に帰る?
雪だるまといっしょに土に溶ける?
消えたつもりでいても
なくなったつもりでいても
ふとした時に心の奥深くに見えない棘になって
気づかないぐらいちくちくと刺してくる
後悔という言葉と手を繋いで
ないものねだり
彼とLINEをしながらも
あなたからの通知を気にしてる
アルバイトの閉店作業
終わる時間はいつも不規則
液晶に「終わった」とぶっきらぼうな通知が光る
彼に「そろそろ寝るね、おやすみ」と送って
彼からの返信に既読もつけずに部屋の電気を消して
車のライトをつけて走り出す
途中彼の家を横切りながら
部屋が暗くなっていることを横目で確認する
赤信号に止まらないように
少しだけスピードを上げる
駅のロータリー
少し離れた場所でハザードを付ける
いつしか点滅音と呼吸がシンクロする
視線は駅の改札を見つめている
白い駅からあなたが見える
薄暗い歩道を駆けてくる音が聞こえる
助手席のドアが開き室内灯が2人を照らす
暗くなっていく車内で静かにキスをする
ウインカーを出しながら車はゆっくり発進する
逃げるように隠れるように
ひっそりと闇に紛れて
もう一つの世界はこれから始まる
ショートショート
今日何あった
今日何食べた
今日誰と話した
今日のいいこと わるいこと
1ヶ月後には忘れてしまう何気ない毎日
小説のような壮大なストーリーなんてそんなに起こらないし
映画のような都合のいいフィクションなんてないけれど
ショートショートのような短編を紡ぐ日々を僕等すごしてる
1ページ先の未来もわからない
結末なんて誰も知らないけど
みんな作者は自分で 物語の主人公だから
時には困ってる人を助けるヒーローになってみたり
時にはかっこいい台詞をいって恋してみたり
時にはピンチもあるけど大逆転を信じてみたりして
人生楽しんだもんが勝ちじゃないですか?
(9月3日未完)
夏の空
めんどくさくなって
わざと忘れてた夏休みの宿題
こっそりと練習してた
逆上がりのしたあとの赤錆た匂いがする掌
浴衣着ていこうね、と
約束してたのに台風で中止になった花火大会
1人だけ見れなかった
夕立後にかかった大きな虹の橋
暑すぎて立ち寄った
レトロ喫茶店のクリームソーダの雫
蝉の音にかき消された
プールのあとに伝えたかった言葉
夏の思い出は薄く透明な青色
同じ空に溶けて混ざって消えていく
17時in
「おはようございます」
「今日は忙しいかな」
偶然店の前で一緒になれた
たわいのない話ができる幸運
朝から用事があったわけじゃない
昼から授業があったわけじゃない
1時間前でも 1時間後でも行けるけど
君が17時inだからという理由
できた料理をお願いするときに
目が合うだけで嬉しくなる
時給がいい訳じゃないけど
君との4時間が僕のバイトのモチベーション