ないものねだり
彼とLINEをしながらも
あなたからの通知を気にしてる
アルバイトの閉店作業
終わる時間はいつも不規則
液晶に「終わった」とぶっきらぼうな通知が光る
彼に「そろそろ寝るね、おやすみ」と送って
彼からの返信に既読もつけずに部屋の電気を消して
車のライトをつけて走り出す
途中彼の家を横切りながら
部屋が暗くなっていることを横目で確認する
赤信号に止まらないように
少しだけスピードを上げる
駅のロータリー
少し離れた場所でハザードを付ける
いつしか点滅音と呼吸がシンクロする
視線は駅の改札を見つめている
白い駅からあなたが見える
薄暗い歩道を駆けてくる音が聞こえる
助手席のドアが開き室内灯が2人を照らす
暗くなっていく車内で静かにキスをする
ウインカーを出しながら車はゆっくり発進する
逃げるように隠れるように
ひっそりと闇に紛れて
もう一つの世界はこれから始まる
9/4/2025, 7:46:53 AM