BUMP OF CHICKENで、
「ジャングルジム」という曲がある。
幼い頃の思い出から、
今電車に乗っている自分まで
鮮やかに展開し、
「未だに心の本当は
ジャングルジムの中にいる」と
歌ってみせる。
何となくギターを爪弾いていたら、
出来た風の歌。
BUMPは「太陽」なんて重い歌もあって、
好きなバンドのひとつ。
形の無いもの
愛とか、信頼とか、友情とか。
形が無い分、言葉や、態度や、
行動に表さないと、
いくら心の中で思っていても伝わらないもの。
水を遣らないと、どんな感情だって枯れる。
週末の駅前
政治家が がなっている
「安保法がー」
「社会保障がー」
「我々は闘うー」
だから清き一票を 清き?
僕はそれを聞くともなく聞いている
通勤電車の定期を買いに
そして早く家に帰るために
その時
顔に包帯を巻いた女性と目が合った
彼女ははっと顔を背(そむ)けて
歩き去った
言っていただろうか 僕の口が
可哀想にと
語っていただろうか 僕の目が
同情を
僕は不意に物悲しくなった
でも僕は強くあらねば
他人に薄っぺらい同情を
している場合じゃない
妻のため 娘のため 僕は強くあるんだ
だから家に 早く早く 帰るんだ 帰るんだ
灯台守のトーチ
魔法使いのリリは、この辺りでは
腕利きの魔法使い。
足腰の痛みをとるせんじ薬や、
失せ物が出てくるおまじないなど、
皆んなが頼りにしている。なかでも、
今の季節のヒット商品(?)は…
「惚れ薬ね」
リリは、女学校の生徒たちから大口の注文が入ったと、忙しそうだ。
「やっぱり秋の注文が多いかしら。
人肌恋しくなるっていうか」
リリはトーチと同じ年頃の15.6才。
なんだけどこの仕事をしてるからか、
ませている。
亡くなったおばあから仕事を受け継いだ
ところとかは、トーチと似ている。
金色の瞳、ばさばさの長い黒髪をふたつに束ねて、時々眼鏡も掛ける。
眼鏡は、文明の利器なのでは、と思うが、
今は古き良きものと新しき良きものを
分け隔てなく使う時代。
魔法使いがいて灯台がある時代なのだ。
「ところで、惚れ薬の材料って何?」
トーチは聞く。
「そうね、オレンジジュースやシナモンを
使った美味しそうなものから、
カマキリの黒焼きを使った不味そうなもの
まで多種多様よ」
「カマキリ!それは僕には使わないでね」
リリは真っ赤な顔になった。
「馬鹿!誰がトーチなんかに!」
僕は灯一。灯台守の灯一。
皆んなからはトーチって呼ばれてる。
カマキリなんて、一般的に不味そうという
意味で使ったんだけど、
リリまだ怒ってるかなあ。
10代。
大好きなバンド。
地元でのライブ。
奇跡の1列目ど真ん中。
初めて買ったシングルの曲。
ギターソロを足にしがみついて聞いた。
あの時ほど時間よ止まれ と
思ったことはない。
私の人生の間違いなくハイライトのひとつ。
懐かしいな…
「夜の花畑もオツなもんねえ」
つい独りごつ。
夏の間だけ解放される花畑。忍び込んだ。
懐中電灯に照らされる向日葵。
時々人みたいでギョッとする。
遠くには灯りのついた高層ビル。
まだ頑張ってるんだね。
友達と来たかったが、
忍び込むというとみんな及び腰。
そりゃコンプラ的に大人的にグレー、
いや黒か。
夏も終わる。
最後にちょっとだけ、いいじゃない。