ことり、

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9/16/2023, 4:27:52 PM

脳天に沁み渡る滴(したた)り
二月の雨
穴の空いた黒い靴 意味を成さない黒い靴
侵入する雨 身体を満たす
どこにも行けない どこにも居れない
身体が重い 心が重い 想い

想いで満たされてる
言葉は吐かれるのを待っている
言葉で描かれるのを待っている
待っている
待っている…

9/16/2023, 5:13:17 AM

君からのLINEはいつもそっけない
何してる?元気?
そうなんだ
おもしろいね
そっか
じゃあまたね

顔文字もない
それなのに
来ると嬉しい
またちょうだいね

9/14/2023, 3:24:37 PM

おいていく
老いていく
置いて行く。

ことばを置いて行く
わざを置いて行く
きもちを置いて行く
れきしを置いて行く
かこを置いて行く
ちからを置いて行く
えいこうを置いて行く

そして
さいごに
いきをふっと
置いて逝く

9/14/2023, 3:20:11 PM

はじまりの音

壊れてゆく音がするね
いつも聞こえてた
祈りの声がするね
いつも聞こえてた
その音はいつも
ただ 始まらなかっただけ

壊れながら壊れながら
ぼくたちは始まろうとする
それはいつも聞こえてた
ただいつも動けなかった
震動に耐えられなくて
弾き飛ばされそうで

祈りながら祈りながら
夜明けの予感を半ば感じながら
それでも断ち切ることだけはしなかった
泥の庭の城はいつも崩れ落ちた
汚れた空気の
息苦しさだけ感じた
壊れる時を知っていた
答えはいつもそこにあった
痛みを伴いながら
答えはいつもそこにあった

9/12/2023, 10:23:23 PM

本気の恋

灯台守のトーチ

「ねぇゲンさん、本気の恋って
したことある?」

大工のゲンは、今日は灯台の修理に来ていた。古いからあちこちが痛むのだ。
しかしトーチのせいで、手にしていた釘を
打ち損ねるところだった。
「そんな言葉、どこで聞いた」
ぼそっと答えた。会話は嫌いではないが
苦手だ。
「あのね、移動教室の隣の席の
ユウちゃんがね、今なんかそういうドラマが流行ってるって」
ゲンは内心ほっとした。
「そりゃお前…俺に聞くことじゃない」
短く刈った髪から汗が流れる。
日に焼けた精悍な肌。トーチの白い肌、
風になびく薄茶色の髪とはまた違う。
「ふーん。ユウちゃんがね、本気の恋は
するものじゃなくて、落ちるもの、
なんだって」
「そ、そうか、ははは、
ユウちゃんすごいな。トーチ、
その道具箱取ってくれ」
「うんっ。あ、そういえばね、この前
魔法使いのリリのとこに行った時ね」
話がうまく逸れてくれそうでゲンは内心
ほっとした。恋や愛だ、
軽々しく話すもんじゃねぇ。俺だって、
思い人の一人や二人…。

「…リリがね、ゲンさんって意外と若いし
いい人ね、だって!」
ゲンは今度こそ釘を打ち損ねた。

僕は灯一。灯台守の灯一。
皆んなからはトーチって呼ばれてる。
ゲンさん手、大丈夫かなあ。

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