駅から家まで約5分。
西の光に向かって歩くたった5分。
雲が速く流れると、私の歩みは遅くなる。
いつもとは少し違う風がおでこにあたる。
ふと気づくのだ。
あ、『冬のはじまり』
冬の夜は案外好きかもしれない。
少し前、夜が少し嫌になった。
その前はもう少し好きだったのに。
いつの間にか、夜が楽しみにならなくなった。
なにがあった。
色々あった。泣いた、辛かった。
なんで、なんでが分からなかった。
夏の夜は虫の声もほんとは少しうるさかったのだと、今気づいた。
だから、自分の足音が耳元に届くぐらいに空気までも、静かに、ひんやりとさせてしまう冬の夜はなんだか、自分だけが生きてる音がした気がして、心地いい。
今、分からなかったことが腑に落ちていく。
丁寧に、一つひとつ。
あの時の問いが腑に『落ちていく』
友達はいるけど、恋人はいない。
駅で、店で、道中で、映画で、テレビで、本で、
どこかで必ず見かける、彼ら彼女ら。
自分もあんな風に優しく呼ばれたい、あんな風な優しい目を向けてもらいたい。
もし、そうしてくれる人がいたならば、全力で愛そう。
もし、そんな人と『巡り会えたら』…
あっ。この本…
最初は、この本とは別のものが欲しくて本屋に寄った。
そこで喰らった衝撃。
まだ表紙も開いてないし、題名も見ていないのに、
これだ、と思った。
でも何を思ったのか、結局買わなかった。
あの日以来、買わなかった後悔と、題名が分からない上、どこに行っても見つけられないもどかしさ。それと同時に、見つけ出さないと次にこれが読みたくなったとき、もしかしたら、もう無くなってしまっているかもしれない、と謎の焦燥感に駆られた。
あの日見つけられたのも奇跡だったのだろう。
しかし、少し経つとその存在さえ忘れてしまった。
なのに、他の本を探していても、題名も忘れてしまったのに、何かを探さなければならないような気がした。
でも今日、やっと見つけた。
あの日見つけた『奇跡をもう一度』
もう直ぐでクリスマス。
「あー彼氏欲しい、彼女欲しい。」と言って恋人を求めて世の中の男女は焦っているだろうな。もしくは、友達とクリスマスパーティーの予定を立てているか。
誰か一緒にその日を過ごしてくれる人を待っている。
特別な名前を付けただけの一日に、なぜそんなにもこだわるのか。
一日一日の価値は変わらない。
いつだって名前の付いた特別な日に変えられる。
ならば・・・
誰かを待つよりも、
限られた時にしか現れない『雪を待つ』