12月14日、八木橋とペットカフェでまた会うことになった。具体的な時間と場所はおいおい決めることにした。
彩子としては11月末でも良かったのだが、彼はやたらと慎重だった。7日は彼の会社で飲み会があり、本調子でないまま彩子と会うのは気が引けるそうだ。
あんなに奥手だった彼からの誘いは、藤堂からのそれよりも彩子の心に響いた。
藤堂には、空いてしまった7日で希望を出した。
『空けておきます!急用が入ったらすみません』
彼もそろそろ決め時と思っているのだろうか。LINEは細々と続いているが、延期になれば次の日程を決めずにフェードアウトの可能性もある。
もし藤堂から告白を受けたとしても、彩子は14日まで答えを出さないと決めた。
【ささやかな約束】彩子7
執筆中
【祈りの果て】
『こんばんは。突然ですが、彩子さんは犬とか猫とか動物はお好きですか?』
唐突なLINEのメッセージ。送り主は藤堂ではなく、八木橋の方だった。
スマホを勢い良く手に取る。ぶつかったティーカップが倒れた。
どうして、今さら。
藤堂に対する不安さえなければ、八木橋からのメッセージが目に留まることもなかったのに。
【ティーカップ】彩子6
藤堂は幼い頃に両親が離婚しており、現在は母ひとり子ひとりで暮らしているという。10歳以上年の離れた兄姉は自立し、それぞれが家庭を持っている。
「条件は悪いわな。あちらはお母さんとふたり暮らしでしょ?」
電話口から彩子の母の躊躇う声が聞こえる。
藤堂への気持ちはまだ覚めてはいない。プロフィールの結婚に対する意識の欄では2〜3年のうちにとあったが、彼がどれほど結婚を意識しているのか、彩子はまだ言質をとっていない。
彩子としては、自分は結婚などできる資格はまだないと思っている。料理は得意と言えないし、掃除や洗濯も女にしては雑である。
借りている1Kの更新が来るまでは、久方の恋愛を楽しみながら家事の腕前を上げたい。それから同棲をして、相手と同じ屋根の下で生活できるのか試したい。彼の他に同居人がいるなら尚更そうだ。
今朝はやけに寒かった。ベッドの上で毛布にくるまっていると、いつの間にか出勤の時刻まで30分を切っていた。
【凍える朝】彩子5
執筆中
【そして、】