美しいものってこの世にいくつもあって、感じ方も人それぞれ。
でも、あの人はもっと特別。
わたしはいつもあなたの後ろを歩いたわ。
優雅な歩き方も、風に靡く髪も、優しく微笑む目も、まるで世界の中心があなたのよう。
でも、あなたったらわたしの手をいつも掴んでくれたわ。わたしはあなたの後ろを歩きたいのよ。
隣を歩いてくれって笑うけど、わたしはあなたの後ろを見ていたいの。
でないと、わたしたち、違う道を歩いているじゃない。
わたしはあなたが歩いた道を歩きたいの。そうしたら、あなたが感じたもの、見たもの全部、わたしとの思い出として仕舞われるのよ。
わたしはそれがすごく嬉しいわ。
美しいあの人の、記憶の一部になれるのよ。
この世界は残酷で美しい。
平等とは自由であり不公平。
この世界の平等は時間だけなのかもしれない。いや、時間すら不平等なのかもしれない。
幸せはすぐに消える。大切な人はいつか去ってしまう。
それでも、美しい夕日に心を奪われ、大自然に溶け込むように息をするのは生きているに等しい。
この世界は変わらない。
いつも変わるのはこちら側だ。
あなたの笑顔が好きだった。
いつもの無表情が溶けたように柔らかくなるあなたの笑顔。
あなたの歩き方が好きだった。
上品で、ゆっくりで、まるで漂うような歩幅。
あなたの手が好きだった。
寂しがりやなわたしをいつも包み込んでくれる温かい手。
あなたの呼吸が好きだった。
生きているって実感させてくれる確かな呼吸。
どうしていなくなってしまったの?どうしてわたしから離れてしまったの?
あなたが好きだった。大好きだったよ。
◯月◯日 お別れ
幸せって長い長い人生の中で一瞬しかないんだって。
でもその一瞬一瞬を幸せと感じれるのって素敵だよね。
『君には幸せって思う瞬間、ある?』
首を傾げるあの子。僕にとっての幸せ?考えたことなかったよ。でもね、なんとなく…。
君と一緒にいることだよ。いつまでも、いつまでも。
虎落笛が吹くような日はあなたと手を繋ぎたい。
その体温を、肌の硬さを、感じていたい。
そしていつか、その手を離す時が来ようと、あなたの温かい手を覚えていたい。