あなたの笑顔が好きだった。
いつもの無表情が溶けたように柔らかくなるあなたの笑顔。
あなたの歩き方が好きだった。
上品で、ゆっくりで、まるで漂うような歩幅。
あなたの手が好きだった。
寂しがりやなわたしをいつも包み込んでくれる温かい手。
あなたの呼吸が好きだった。
生きているって実感させてくれる確かな呼吸。
どうしていなくなってしまったの?どうしてわたしから離れてしまったの?
あなたが好きだった。大好きだったよ。
◯月◯日 お別れ
幸せって長い長い人生の中で一瞬しかないんだって。
でもその一瞬一瞬を幸せと感じれるのって素敵だよね。
『君には幸せって思う瞬間、ある?』
首を傾げるあの子。僕にとっての幸せ?考えたことなかったよ。でもね、なんとなく…。
君と一緒にいることだよ。いつまでも、いつまでも。
虎落笛が吹くような日はあなたと手を繋ぎたい。
その体温を、肌の硬さを、感じていたい。
そしていつか、その手を離す時が来ようと、あなたの温かい手を覚えていたい。
20歳になったらなんでもできる。
どこへだって、何をするにも自由。
子どもの頃はそう感じていた。
だけど、それは社会の中での自由、いわゆる不自由な自由ってやつで、実際にできることなんて限られてる。
そして、20歳になって気づく。
子どもの時の自由こそ、本当の自由だったことに。
何にも縛られず、何にも考えず、何にも恐れず。ひたすらに好奇心の向く方へ。
20歳は自由を手に入れる歳であり、自由を手放したことに気づく歳だ。
完璧じゃなくていいのよ。
何か自分だけの特技さえあれば。
これは母の口癖。
2人で月を見る日は決まってこの言葉を言う。
大人になるって完璧になることじゃない。
欠けた部分を無理やり埋めながら生きることじゃない。
でもね、母さん。
今日の満月はあんなにも遠くて、眩しくて、美しい。